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仮面ライダー烈戦伝 第3話

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3本の手が一瞬、重なった。ただの3本の手ではない。いずれも悪の組織を壊滅させた勇者たちの手である。
瓦礫の中から立ち上がる。軽く破れ、汚れた衣服をはらう。だが、血と傷にまみれたその顔は、二人の英雄にはさまれて笑っていた。
「いいツラになったな」
一文字がそう言って、風見の肩をたたく。
「なにしろ、もともといい男なんでね」
風見も言う。
「じゃあ、いい男がそろったところで・・・ひさしぶりにやるか」
本郷が日焼けした顔に男性的な笑みを浮かべた。
「やるか」
「ええ、やりましょう」
一文字と風見もともに頷いた。
行くぞ、トリプル変身だッ!!
本郷の右の手刀が天を衝く。一文字と風見の二本の手刀が風を切る。それは、悪を許さぬ固く靱い決意の証。
「ライダー、変身ッ!!」
「変身、V3ッ!!」
常に勝利を呼び、悪鬼どもの企みを打ち砕いてきた3つの咆吼が天空に舞い上がる。3人の勇者のベルトに内蔵された4つのタイフーンが全力回転し、3人の姿を、正義を背負う戦士のそれに変えていく。
「このまま突っ込むぞ!」
本郷の声に、二人の仮面ライダーは、よしっ!と応じた。
トリプル・ライダー・キックッ!
上空から加速しながら攻撃に移ったトリプル・ライダーは、音速を維持したまま佇立したままのアルビオンの頭部めがけて突っ込んだ。
「・・・!」
だが、激しく地面に打ち倒されたのは、またしてもライダーたちだった。アルビオンの周囲に展開する不可視の遮蔽場は、巨山を砕き、大渓谷を埋めるほどの破壊力をもつ彼らの必殺技さえも易々とはねかえすことができるのだ。
「仮面ライダー1号・本郷猛、仮面ライダー2号・一文字隼人そして仮面ライダーV3・風見志郎。人類の繁栄を陰からささえてきた3人の英雄。辛く長い戦いを勝ち抜いたあなたがたと、私は、戦わなければならない」
アルビオンは、宙に浮いている。その秀麗な相貌には、いつわらざる寂しさがにじみでている。
1号ライダーと2号ライダーが、瞬間、風のように動き、V3の盾になる。そこをアルビオンが放つ白銀の熱線が撃ち抜いた。
「先輩ッ!」
V3の視界の中で、肩と足から大量の血をほとばしらせながら、ゆっくりと倒れる二人の姿が動いていく。
駆け寄ろうとするV3をふくめ、3人のライダーに異変が生じた。屋上のコンクリートごと沈下するほどの力がライダーたちにのしかかってくるのだ。
「な、なんだ・・・」
「重力制御でしょうか・・・」
かつて感じたことのない負荷が全身にのしかかり、指先さえも動かすことができない。
「ち、ちがう・・・これは・・・」
サイコキネシスだ。
2号ライダーがあえぐように叫ぶ。
「そ、そうか、こいつは・・・サイキック・ソルジャーというわけか」
巨大な思念の力をもって、自らを守り、転じて武器となす。だが、眼前の天使を自称する美青年の放つ力は、巨大という表現すら超越したエネルギーといえた。
圧倒的な力であった。圧力はさらに増し、屋上は崩落寸前である。
「いかん、建物ごとおれたちを下敷きにするつもりか」
「そんなことで死ぬあなたがたではないでしょう」
本郷の声に、アルビオンは沈鬱な声を発した。
「私は、ほんとうは、あなたがたと戦いたくない。降伏しませんか。このように、私は強い。あなたがたでは私に勝つことはできない。私は、これまであなたがたが戦ってきたものたちとは比較にならない力をもっているのです。こうでもしなければ、あなたがたは私の声を聞いてはくれない。だから、やむをえず、私は力の一端を見せているのです」
アルビオンは、蒼くきらめく瞳を倒れ伏せる3人のライダーに向けた。
「私が討つのは、抵抗するものだけです。あなたがたが抵抗をやめれば、私たちは、手を携えることもできるのです」
「その“私たち”という言い方が気にくわんな。虫酸が走るぜ」
1号ライダーは、かすれた声で失笑した。
「ほんとうだ。自分は手を汚さず、コマンダーと呼ばれる怪人を創って、恐怖によって人類を間接支配しようともくろむやつと、同類のように聞こえるからな」
2号ライダーもその屈しない意志をこめて、応じる。
「“お前はおれに勝つことはできない”。おれたちにそう言った敵は、これまで数限りなくいた。だが、おれたちは、そのすべてに勝ってきた」
「そう、あなたがたは、努力と執念で自分の性能を超える力を体得し、強敵に勝ってきた。あなたがたにその力を与えたのは、あなたがたのもつ人間に対する深い信頼だ。でも、それでも超えられないものがある。あなたがたの性能を限界まで引き出したとしても、私の放つ力に対抗することはできないのです」
V3の怒りにみちた声に、アルビオンの声がつづく。
崩壊の音とともに、屋上の一部が建物の数階分のフロアもろとも崩落する。墜落しようとする2号ライダーの手を1号ライダーがつかんで、引き上げる。そのとき、ライダーたちは、気がついた。
身体が動く。アルビオンのサイコキネシスが消失している。
(聞コエルカ、仮面ライダータチ・・・)
勇躍、立ち上がったライダーたちの脳裏に、声が響いた。それは、幼い子供のようでありながら、力強く、意志にみちた声であった。
(コノ天使ノバリアハ、ボクガ封ジタ。ダガ、油断ユルナ。天使ノバリアガ解除サレタコノタイミングヲ逃サズ、先制攻撃ヲカケルンダ)
見れば、たしかに、アルビオンの様子はおかしい。見えない干渉者にあらがいながら、エネルギーを集約するために動きが停滞している。
「この声は・・・」
「おれたちの頭脳に直接コンタクトしてきたのか」
1号ライダーと2号ライダーが顔を合わせる。
「でも、チャンスだ。このチャンスを逃したら・・・」
V3の声に、二人のライダーは、大きく頷いた。
3人のライダーの脳裏に語りかける声。それがテレパシーであることは、一瞬で理解できた。
どこかに、このアルビオンにも匹敵するサイキックがいる。そして、その超能力者は、子供のような声と明るく輝く光のイメージをライダーたちの心に注ぎ込んでくれる。
(キミタチノエネルギーノ源デアル核融合炉ノ反応ヲ臨界ニ上ゲルンダ。安心シタマエ。メルト・ダウンハ、コノボクガ必ズ防グ)
ボクヲ信ジルンダ!
「V3!」
2号ライダーの声に、V3は、瞬時に呼応した。
V3・ホッパー!
彼が上空に打ち上げたV3・ホッパーは、本来は、超小型の浮揚型監視カメラである。だが、ライダーたちは、V3・ホッパーを追尾してジャンプする。
暗黒の天空を切り裂き、閃く雷光の群れ。その一条が、上昇するV3・ホッパーを直撃し、これを粉砕しながら大地をつなごうとする。だが、その黄金の光条は、直下に舞い上がっていた3人のライダーに落雷した。
3人のライダーの五体が黄金の輝きを発している。それは、雷撃によって、身体が火炎につつまれているのではなかった。
落雷によって一時的に核融合炉の制御システムが停止し、ライダーたちの全エネルギーが完全解放されているのだ。
かつて感じたことのない力、かつて感じたことのない勇気が全身の神経回路をかけめぐり、黄金に光り輝く3人の戦士は、横溢する無敵の感覚に咆吼をあげた。
「みんな、スクリューだ! おれたちのこのパワーを最大限に増幅してやつにぶっつけてやる!」