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ありえねぇ!! 1話目

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臨也は情報屋で、自由に使える時間はあるけれど、性格が悪すぎるので頼るなんて論外だ。
では静雄……と、気のいい友人を期待したのに、携帯を新羅に頼んで何度も鳴らして貰ったのに、全く繋がらない。


だから日が暮れるのをじりじり待ち、彼女は静雄を探し出す為夜の町へと飛び出したのだ。
気が立っていたから、かなり滅茶苦茶であてずっぽうに駆けずり回った自覚もある。

でも、コシュダ・パワーが急にセルティの言うことを聞かず、勝手に方向を変えた。
バイクが無理やり自分を連れてきた先は、池袋でも段違いに人通りの多い、60階通りだった。

数ヶ月前、矢霧波江が破滅したきっかけとなった『首』事件。
ダラーズの初集会に集まった大量の群集の面前、正にこの場所で、セルティはビルの屋上からバイクで降下し、大鎌を振り回して大立ち回りをしでかしたのだ。

できれば深夜以外は立ち寄りたくない。
なのに、主の言うことなど聞かないバイクは、人々が瞠目し、携帯のカメラを突きつける最中、どんどん人ごみを掻き分けて進んでいく。


そしてセルティは見つけたのだ。


溢れんばかりの人の中にあっても、誰にも省みられず、存在すら認識してもらえずに涙する、ふよふよ浮きながら彷徨っていた帝人の首を。



★☆★☆★


『最初私も、見間違いか錯覚だと思って自分の体を叩きまくったけど、痛かったし、帝人の頭を持ち上げても重みも質感も感じないし、生霊って本当に存在するんだって感動して……、いやいやそれ所じゃない。とにかく静雄、落ち着いて聞いてくれ!!』

「ああ、判った判った。まずお前が落ち着け。それで?」

指だけでなく、己の影まで使ってPDAに入力される早い文字を、必死で追う。
元々本を読む趣味はねぇ。頭も悪いから、小難しい漢字を突きつけられても読めねぇ。
まどろっこしさに、段々イラッときだした。
やべぇ。


『帝人の首は一向に泣き止まないし、新羅にメールして病院に帝人の親戚のふりして様子を確認してもらえば、現在も意識不明のままだというし。……それで新羅が『病院にある筈の帝人君の体に、その霊を戻せば直ぐに起き上がるんじゃないか』って。そんなことで帝人が回復するなら、私は……、直ぐにでも駆けつけたかったのに……!!』


けれどセルティでは病院に入れない。
代理を頼もうにも、そもそもこの帝人の首幽霊を、見る事ができる奴がいるとは思えなくて。
どうしようかと新羅に相談メールを送ろうとした所に、静雄がやって来た訳だ。
しかも帝人を見る事ができた訳だし。
セルティが狂喜乱舞して飛びかかってきたのも当然だった。


「あー大体判った。んじゃ、俺が一っ走りして、その首を帝人の体の中に、放り込んでくりゃいいっつー訳だな」
『やってくれるか♪』
「他に当てなんてねぇだろ。それに、竜ヶ峰とは、俺も知らねえ仲じゃねぇし」
『良かった♪ 良かったな帝人♪♪ もう大丈夫だぞ♪♪♪』


セルティが身にまとう影が、彼女の喜びを全身で表すかのように、どす黒いがハートマークや♪記号を、辺り一面に飛ばしまくる。

だが、こんなにも親身になって心配して貰っているというのに、帝人の首は相変わらず嗚咽を堪えてぐずぐずと鼻を啜り、セルティがつきつけたPDAも全く見ちゃいない。


眉間にぴくりと皺がより、米神がずきずきと疼きだす。
そろそろやべぇ。切れるかもしれない。
多分今、額に血管も浮き出しているだろう。
優しく優しくと、念仏唱えるように繰り返し、拳をぎゅうっと握り締め、大きく息を吸う。


「竜ヶ峰よぉ、お前がどれだけ長時間怖い思いをしたかしんねぇけどさ、その態度はちょっといただけないんじゃねぇのか? ここまで連れて来てくれたセルティに、一つぐらいきちんと礼の言葉ぐらい言えるだろう? それに男なんだから、そう何時までも女々しく泣くな。な?」


イライラを押し殺し、随分気も遣って、優しく言葉を選んだつもりだ。
なのに、一向に帝人は泣き止まない。
それどころか今の自分の言葉も、今までのセルティの献身すら、理解しているかも怪しい。

ただでさえ沸点が低すぎる上、こんな無礼は見過ごせない。
ムカつく気持ちが抑えられず、拳を握り締め、勢い良く振りかぶる。

「竜ヶ峰ぇぇぇぇ、てめぇ年長者に向ってどうゆう了見だあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
『静雄、ストップ!!』


振り下ろされた拳は、帝人の頭を綺麗にスルーし、その真下の荷台……、つまりコシュダ・パワーの体にがっつり決まった。



ギヒヒヒヒヒヒヒィィィィィィィィィィン



コンクリートも易々砕く拳をモロに受け、黒馬の悲痛な声が闇に劈く。
瞬時に馬の四つ足に変わったバイクは、景気良く後ろ足で蹴りを寄越した。


「…とととと、悪いなつい。大丈夫か?」
『全くだ!! 私の大事な相棒だぞ、可哀想に……』


馬の攻撃を咄嗟にかわし、セルティを見習い、黒い背を撫でようと腕を伸ばすが、あっさり尻尾で叩き落とされてしまった。
元々動物に全く好かれない化け物な身だが、いつも気軽に乗せてもらっていた馬にまで嫌われると、結構傷つくものだ。


そもそもの元凶は【竜ヶ峰の首】なのに。


「おい、お前自力で浮けるんだろ? 体に戻してやるから、俺の後付いて来い」

まだしぶとくしくしく泣いている首に、ますますイラッとくる。
が、どうせ攻撃しても当たらないし、奥歯を食いしばれば盛大な歯軋りが鳴った。
その怒りを我慢し、タバコを一本取り出し口に咥えて火をつける。
(頑張れ俺、後少しでいいから、忍耐を保て)


「竜ヶ峰。俺は今のお前の泣きに付き合う時間なんて、人生において後一分ぐらいしか持ち合わせてねぇぞ。このタバコを吸い終わるまでに付いて来なかったら、もう知らねぇ、勝手にその辺を永久に彷徨っとけ。いいな?」

『静雄!! そんな脅すような事を言うな。帝人が可哀想じゃないか!!』
セルティがPDAをつきつけて抗議してくるが、そんなもん知るか。


スパスパ紫煙を吐き出していると、丁度吸い終わる直前に、ずっと俯いたままだった竜ヶ峰の顔が上がった。
嗚咽を一生懸命堪え、大きな瞳がようやく俺を真っ直ぐに見やがった。
散々泣きはらした目は充血して真っ赤、それに俺の怒声が恐ろしかったのだろう、唇がわなないている。


《あの……、ひっく……し、がみね、……、かどって……えっく……》
「ああ? お前何言ってんだ? 全然わかんねぇ。もっとしっかり大きな声出せ」


まだイライラが燻っているから、投げつける言葉も当然キツイ。
自分に凄まれ覚悟を決めたのか、帝人はしゃくりあげつつ大きく息を吸った。



《……お二人にお聞きしたいのですが、ひっく……『りゅうがみねみかど』って私の名前なんですか? 起きた時から……、ひっく……、何も覚えて無くて……。どうか教えてください……》


空気が再び、ぴしりと変わった。

「……ちょっと、待てよ……」

イラっときていた感情が一転、今度はみるみる顔から血の気が引いていくのをはっきり感じる。
セルティも多大なダメージを食らったようだ。
PDAを手からすべり落とした事も気づかず、全身をがたがたに震わせてやがる。

作品名:ありえねぇ!! 1話目 作家名:みかる