わがままフェアリーラブ!
「・・・と、言うわけなんだけど運び屋。おおおお俺どうしよう」
『・・・帰れよ』
人っ子一人いない高架下。
家から靴だけ履いて飛び出してきた俺は、見事に車に轢かれそうになった。
シズちゃんじゃないんだから、ぶつかったら死ぬか重傷になる。
そこをバイクに引き上げて助けてくれたのが運び屋だった。
物言わぬ彼女に礼もそこそこ、帝人君の些細なわがままから始まって俺が家を飛び出してしまったところまで話してしまった。
いやもう言わずには居れなかったんだ。
助けてほしくて仕方なかった。
(いい様に使われてただけなのか!?それとも恋人としてのわがままなのか!?そして逃げ出した俺を帝人君はどう思ってるのか!?)
「あぁぁぁぁぁぁ」
頭を抱える。
ついにうずくまった俺の上の方で、ぱちぱちとPDAを打つ音が聞こえてくる。
情けない表情を浮かべているんだろう顔を上げると、薄闇のなかにぼんやりと浮かぶ電子文字。
『とにかく帰って話し合うしかないだろう』
「そこでフラれたらどうするのさぁっ!?俺の全力の恋愛だよ!?もう目一杯精一杯なこの状況でフラれでもしてみなよ、池袋の街を混乱と絶望で埋め尽くしてやるけどいいの!?」
『はた迷惑なやつだな!帝人もお前のどこがいいのか・・・』
「・・・いいって、思ってくれてるの、かな・・・」
ずーんと落ち込む。
俺が帝人君だったら、絶対俺みたいなやつと付き合わない。
だって面倒だ。自分で理解してる。
たぶんこれで家に帰って、帝人君にマジでフラれたりしたらそのまま監禁すると思う。
俺は帝人君のことを愛してるんだから、離さないよ、当たり前じゃん。
それで帝人君も俺がそう思ってることを、知ってると思う。なんだかんだと聡い子だし。
でも家に帰るには問題があるんだ。
「・・鍵、ないんだよね・・・」
『・・・』
「俺の家、オートロック、なんだよね・・・帝人君に開けてもらわないと、エントランスにすら入れなかったり、するんだよね・・・」
『・・・いくら帝人でも家主が帰ってくるのを拒否しないと思うぞ』
「・・・・・拒否されたらどうしよう・・・」
『本当に面倒なやつだなお前は!』
作品名:わがままフェアリーラブ! 作家名:ジグ