わがままフェアリーラブ!
その後は延々と押し問答が続いた。
セルティは話せないから、俺がひたすら喋って時々PDAの電子文字に突っ込みを入れられる。
俺は人の意見とか無視できる性格だから、とりあえず吐き出して吐き出して吐き出してと繰り返す。
ぎゃいぎゃいとどちらも納得しない話し合いという名の口喧嘩をしばらくしていたけど、いい加減疲れたんだろう運び屋が突然話を変えやがった。
しかも俺の度肝を抜く形で。
『そういえば臨也。お前浮気したんだって?それが原因じゃないのか』
その時の俺の気持ちを誰が理解できるだろうか。
なんていうか・・・ごっそり髪の毛が抜けたんじゃないかと思った。
実際頭に手をやった。
「・・・は?」
その「は」もローマ字で「HA」ではなく、「・・・h・・a・・・」ぐらいだった。
もう言葉にならない。
何度か瞬きを繰り返して、深呼吸して、さらにアキレス腱伸ばしたり屈伸運動までしてから、もう一度耳に手を当てて、さん、はい
「は?」
『浮気』
チカチカと光るカーソルにきっと目がやられてしまったんだと、俺は目をこすってこすって、それでなくても赤みがかっている俺の目の白目の部分まで赤くしながらもう一回突きつけられているPDAを見ても、やっぱりそこにあるのは
「・・・うわき?え、うきわじゃなくて?」
『浮気』
「・・・誰が?」
『お前が』
「・・・へ?」
『浮気』
どこからどう見ても大混乱中の俺をほったらかしにして、運び屋がカカカッとPDAにさらに入力する。
『お前が浮気したから、怒ってたぞ。だからわがまま言って、それでも好きだって言ってもらえたらって・・・あれ、』
そこまでPDAに俺に見せておきながら、運び屋はない首を傾げた。
もう一度入力して
『・・・言っちゃダメだったかな・・考えてみれば』
「お、おぎゃあぁぁぁぁーーーっ!!俺的にはナイス!役立つじゃないか運び屋!今度の依頼は料金倍にして払ってあげるよ!!」
新羅なら「このうっかりさーん!」とか言ってあのヘルメットを指先で突いたりするんだろう。
が、俺は今すぐこの場から立ち去りたかった。
いや、この場というより、早く帝人君のところに帰りたかった。
だって
(浮気!?俺が浮気!!?そんな馬鹿なありえない!ってことは何かを誤解して怒ってそれでそれで!!)
慌てすぎてるせいでフォームもめちゃくちゃに走って息切れしてる。
はっきり言って間抜けな姿だろうけど、もうそんなことはどうだっていい。
人の目なんて気にしてられるか。
っていうかセルティに乗せてもらえば良かったんだってことに、自宅のマンションが見えてから気が付いた。
(気持ちを疑っててそれを確かめようとあんな可愛いわがまま言っちゃったりして拒否されて泣いちゃって!)
どれだけ愛されてるの俺!!
(俺に無理って言われて泣いちゃったんだ!嫌われたとか怒られるとかそんなこと考えたんだきっと!あぁなんて可愛いんだろう!俺が逃げて今独りで何考えてるんだろう、あぁ可愛い可愛い!)
他に女がいるの、なんて責めることもできなくて、必死にわがままを考える帝人君を思い浮かべるだけで、俺は笑顔で走れるね!
というわけで高笑いしながら走ってみたら、ものすごく人が避けてくれたおかげで素早く家までつくことができたよ。
あぁ俺は折原臨也だからね!このくらいの奇行では警察なんて呼ばれないさ。さすが俺。
作品名:わがままフェアリーラブ! 作家名:ジグ