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カッパの罠

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「……朝から何も口にしていないけれど、木暮くんは大丈夫?」
「……それはヒロトさんも同じじゃん、平気なの?」
段々二人の口数が少なくなっていく。疲労に加えて空腹と喉の渇きが二人の身体から体力を奪っていく。
「森なんだから果物の一つや二つ実を付けているべきだよね……あれっ?」
木暮が何かを見つけて立ち上がる。その様子にヒロトも視線の先を木暮と合わせて周囲を探った。
「あれは……きゅうり……?」
森の中にきゅうり畑があるなんて、誰が管理しているのか日光や水分量は充分に足りるのだろうか、ヒロトが思い巡らしている間にも木暮は駆けていき「こっちだよ~!」と片手を大きく振ってヒロトを呼んでいた。

「えへへ、一本いただき! こっちはヒロトさんの分ね!」
木暮がきゅうり畑から、瑞々しく深緑色をしたきゅうりを二本もぎ取る。
他人の畑から勝手に作物を取るのは問題があるだろう。まして管理者は森の中にわざわざ畑を作るような奇特な人間だ。ヒロトはそう思ったが木暮の好意を無碍にすることも出来ず、黙ってきゅうりを口に入れた。
「これ……凄く美味しいね……」
喉と腹の飢えを差し引いても、そのきゅうりは美味だった。
一口ごとに水分が口腔内で弾け、爽やかな香りが広がる。種から実に至るまで森の中で育てられたきゅうりは森林成分を余すことなく吸収して成長したのだろう。心安らぐ香りが、迷子になっていることも不安な気持ちも忘れさせてくれる。
もう一本だけなら……主が現れたら謝ろう……そう、もう一本だけなら……。
気が付くとヒロトも木暮も、もう一本、もう一本と操られるようにきゅうりへと手を伸ばしていた。


「キイイイィィィ!」
突然、背後から金切り声がした。
その声に二人の目は覚め、漸くきゅうりから口を離した。成熟した実を何本も付けていたはずの畑から、良質な物は粗方失われてしまっていた。
声に振り返ると、そこには――。
「カッパ……?」
二人の声が揃う。
その者の姿は一目で妖怪と理解できる物だった。人間に近い物では無く、体表面は爬虫類のような細かい鱗で覆われカエルのように水分でヌラヌラと鈍く光を反射しているし、指の間には大きな水掻きがある。加えて嘴や頭頂部の皿、背中の甲羅から、カッパという名前が即座に思い浮かんだ。
ただし、ここはライオコット島。日本街はあれどもFFIの一月前に建設されたもので河童が住み着くほどの歴史はない。
「……妖怪には違いないけどね」
逃げるべきか否か、僅かに逡巡したのがまずかった。木立の合間から、何匹もカッパが現れ二人を取り囲む。最早逃げ出せる隙間はない。
「この数……やばいよ。俺たちが無断で食べて激怒しているのかな……」
「いや、それにしては数が多すぎる。このきゅうりは人を誘い込むための罠だったんだろう」
ジリジリとカッパ達の輪は狭まっていく。罠だとしたら捕まったら一体どうなるのだろうか。
目的不明は恐ろしい。人外の姿で青臭い吐息を吐く怪物は更に恐ろしい。
「ヒロトさん……こんな奴ら流星ブレードでやっつけちゃってよ!……ヒロトさん?」
木暮が恐怖に耐えかねてヒロトに叫ぶように必殺技の使用を頼んだ。だがヒロトの顔は白を通り越して真っ青となっていた。
「俺……川で溺れかけて、それ以来カッパはダメなんだ……」
あの時浅瀬で脚を取られたのはヒロトだった。
藻掻いても藻掻いても脚が動かず、近くに職員や友人がいたのにはしゃいでいると勘違いされ、意識が遠のくまで溺れていることを誰からも気が付かれなかった。
友達の姿か木の枝の陰か、意識を失う寸前に見た水中を過ぎる黒い影をヒロトはカッパだと信じ、キャンプ後の長い間も絵本に出てくるカッパでさえ恐怖した。
「旋風陣!」
木暮が地面に手を突き、必殺技を繰り出す。風圧により吹き飛ばされた者と、舞い上がった小石と土から顔を塞ぐ者が現れ、輪から逃げ出せるほどの間が開く。
「ヒロトさん!こっちだ!」
その隙を狙い、木暮がヒロトの手を引いて二人は共に駆けだした。

作品名:カッパの罠 作家名:兎月