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カッパの罠

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「まだ追ってくるよ、あいつらしつこいな……!」
追い着かれそうになる度に必殺技を使い、カッパを足止めする。しかしカッパは足場の悪い森の地形に慣れているため、開いた差もすぐに縮められてしまう。
「旋風、陣!」
木暮の必殺技の使用で再度数匹のカッパが周囲に飛ばされる。
だが必殺技はグランドでの使用を想定されて産み出された物である。狭く鬱蒼とした森での使用は秘伝書の主も想定外だろう。更に急いで何度も繰り返し必殺技を披露することで、身体のバランス徐々に崩れていき……。
「木暮くん!」
「うわぁっ、まずいよ、ツタが絡んで動きが取れない!!」
脚と接触したツタが回転の効果により、木暮の身体全体を搦め捕った。何処をどう解いたらいいのか瞬時の判断が出来ない。それでもヒロトは力任せにツタを引き千切り、木暮の身体から除去しようと懸命に努力した。
「ヒロトさん!……俺のことは良いから、ヒロトさんだけでも逃げてよ!」
「冗談じゃない、木暮くんを置いて逃げられるわけないよ! ……くっ、こんなツタなんか……!」
懸命にツタを引き剥がすヒロト。ツタと擦れ、掌と指に何本もの切り傷が作られる。
しかし――間に合わなかった。
ヒロトの脚がカッパに捕捉され、一瞬の後にカッパの群へと引きずり込まれた。
「あああっ!!ヒロトさん!!」
ヒロトの身を案じている場合では無かった。木暮の身体を拘束しているツタをカッパは一息に毟り剥がすと、ヒロトと同様に四肢を掴まれ群へと連れ込まれる。ジャージの上下にカッパの手が掛かり、服を無理矢理流される。
「俺たちなんか食べても美味しくないよ!!」
「キイイィィ、キイッ、キイッ!!」
木暮の訴えにカッパは謎の叫び声を上げる。その声と仕草にヒロトはカッパ達の目的を理解し、更に青ざめる。
「木暮くん!違う、こいつらが食べたいのは身体は身体でも……尻子玉だ!」

尻子玉とは人の肛門内に存在するとされる『架空の』臓器である。
抜いた尻子玉は食べたり竜王に税金として納めたりする。
尻子玉を抜かれた人間はふぬけになると言われている。

「きっと日本の妖怪の伝承がライオコット島の妖怪に中途半端に伝えられたんだろうね!きゅうりで人間をおびき寄せて尻子玉を戴こうって作戦なんだと思うよ!……わああっ!」
「こんな時に解説なんていらないよぉっ!!……ひゃああっ!」
カッパが二人の下着を脱がし、尻の谷間の間に指を添えた。

「うわあああぁぁぁぁっっ!!」
「やめろおおおおぉぉぉぉぉっ!!」

二人の叫び声が木々の合間に響いたが、それを聞く者はカッパ以外には誰もいなかった……。
作品名:カッパの罠 作家名:兎月