紅の識者
夕方は後姿だけで顔は見えなかったが、大きな目の髪色に近いブラウンだった。
幼い姿からは、とても目の前の人物が護廷十三隊の隊長格には見えないだろう。
夕方見た子供達と着流しを着て魚取りをしている姿のほうが、よっぽど似合う。
だが、一護が来ている羽織は、隊長格しか着ることの許されない白の羽織であり、感じる霊圧も些か怒っている所為か押さえ切れないようで、奥に秘めた力が溢れている。なにより見惚れてしまった髪色を間違えるなんて間抜けなことはしない。
一目見て身体中を電流が走るような感覚。客に媚びる女が、以前そんなことを言っていたのを、浦原は思い出す。
先ほどの呟きは、それが体現したものだった。
一目見て電流が走るような感覚を、一目惚れだという。
「おい?」
「・・・、て下さい」
「は?」
浦原の声が小さすぎて聞き取れなかった一護は、首を横に傾げる。そんな一護を他所に、浦原は瞬きもせず歩み寄ると、一護の手を取り跪き、
「アタシと結婚して下さい」
一瞬何を言われたのか分からず、一護は数秒置いた後、青褪めると、己の手をぎゅっと握り締める浦原の横顔を力いっぱい殴り飛ばした。
浦原喜助は黒崎一護に恋をしたらしい。
(20100917)