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甘い罠

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それからも2人はスイパラだのスイーツバイキングだの、甘いもの巡りをしていた。
店に行って奢りたい静雄からの誘いだったり、新しい店を見つけてきた帝人の誘いであったり、また時折公園でクレープだのを帝人が奢ることもあった。
2人が出会う=甘いもの食べ歩き、という公式が出来上がって少し経った頃、静雄は再度混乱の坩堝へと叩き込まれた。
それは仕事中のことだった。

「・・・臨也?と・・・竜ヶ峰?」

ガラス張りになった店内に、この世で一番消えてほしい人間と、スイーツ仲間の姿が見えたのだ。
店の外と中、当然臨也の声は聞こえないが、その大ぶりなリアクションと薄ら笑いのニヤケ顔は間違いようがない。
対して帝人はほぼ毎日に近い割合で会っているのだ、こちらこそ間違いようはもっとない。

(そういやあいつら知り合いだったか・・・つか、なんで俺はこんなにびっくりしてんだ?)

その店はまだ帝人とは行ったことのないスイーツバイキングの店だった。
今度はここにしようか、と思っていたのはつい先日のことだ。
何やら楽しそうに臨也が帝人に話しかけてはリアクションを取り、帝人は頬杖をついたままパイをフォークで突いていた。

「静雄ー?どうした、先行くぞー」

と、店内の2人に気付いていないトムが数メートル先から声をかけているのにも反応しない。
ぴたりとその場に足を止めてしまった静雄に、視線の先を辿っていけば楽しそうなのと憂鬱そうなのとの2人組の姿。
ギリ・・と静雄から歯ぎしりが聞こえたのを境に、トムは次の取り立て先へ行くことを諦めた。

(人生諦めと引き際が肝心だ・・・)

なんて遠い目をしながら思っていれば、その背後からガシャーンッと激しいガラスの割れる音が聞こえてくる。
やれやれと首を振って、どこかこの騒ぎに巻き込まれない程度に離れたところで煙草でも吸おうとトムは歩き出した。

そしてガラスの割れた窓の隣で、臨也はうっとうしげに目を細めていたし、帝人は正反対に目を大きく見開いていた。
茫然とする帝人の隣で、パキリとガラスを踏み割る音が聞こえてくる。

「なんで俺がびっくりしたのかはどうでもいい。この店もう来れねぇのも仕方ねぇ。けどとりあえずてめぇは殺す・・・っ!!」
「あーもう最悪だよ、さいっあく。シズちゃんったらわかってるー?もうちょっとで帝人君にまでガラス降り注ぐとこだったんだよ?俺がとっさに引き寄せて窓から離れなかったら一生消えない傷残っちゃったかも!酷いよねー怖いよねー?」

はははといつもの人を馬鹿にしたような笑い声をあげながら、帝人の腕を掴んでいるのとは逆の手でナイフを取り出す。
臨也の言葉に、血が登っていた頭に少しだけ冷静さが戻ってくる。
2人が笑いあう姿が見たくなくて、思わずガラス窓をぶち破ってしまったが、確かに身体能力の低い帝人には危険なことだった。
一瞬怯んだ静雄だったが、ぐっと唇を引き結んで帝人を見やる。
ぽかんと口を開いたまま、帝人は静雄と臨也を交互に見比べていたが、その静雄の視線に苦笑して

「あ、僕は大丈夫ですよ。一応男ですから多少の傷が出来たとしても別に構いませんし。それよりこんにちは静雄さん」
「おぉ、こんにち・・ってそうじゃねぇ!あ、いや、そうじゃなくてだな・・あー・・・悪かった」
「ホントだよね!帝人君の優しい言葉に感謝して詫びて死ねばいいのに!」
「うるせぇてめぇが死ね臨也ぁ!っつーか何でてめぇと竜ヶ峰が一緒に甘いもん食ってんだよ!」

自分で叫びながら静雄はなんだか悔しかった。
いつも楽しく一緒に食べてると思っていたのは自分だけだったのか、甘いものが食べれるなら臨也とでも出かけるのか・・
そう思ったら悔しくて、一方的に裏切られたような気持になった。
そんな自分が情けなくてぎゅっと拳を握りしめる。

(竜ヶ峰の行動を俺が決めることなんてできねぇ・・・誰と出かけるかなんて自由だ、けど・・っ)

一緒にケーキを食べさせあったり、クレープを「美味しいですよ」と言って持たせてくれたり、次はどの店に行こうかなんて顔を突き合わせて話し合ったり・・そんなことを臨也ともしてるんだと思うと、腹の奥が熱くなって、訳もわからず喚きたくなってくる。

(俺はっ、お前と一緒にいたいのに・・っ、お前は違うのかよ!)

今までの帝人の笑顔が脳裏に思い浮かんでは消えていく。
そして笑いあう帝人の視線の先には臨也がいるのだと思えば、もうここで全力で臨也を殺そうと本気で考えそうになる。
ぐるぐると殺意と悔しさに頭が爆発しそうになっている静雄の前で、ふぅとわざとらしく臨也がため息をついた。

「誰とどこに出かけるとか帝人君の勝手でしょー?っていうかどれだけ俺が頑張ってここまでこぎつけたと思ってるのさ。それを邪魔してくれちゃってほんとあれだね、万死に値するね。それにさぁ」
「・・・っあ、ちょっと待ってください臨也さん!」

握られたままの手を引っ張って臨也のべらべらと喋る口を慌てて閉じさせようとする帝人だったが、一足遅かった。


「甘いもの好きじゃない帝人君をあれだけ連れまわすとかさ、シズちゃんも自重しなよね」

作品名:甘い罠 作家名:ジグ