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you are my hero.

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職員室の前でこそ動けなかったが、ここで思索をめぐらせているうちに、事件への好奇心は湧き上がってきていた。その事実に、戸惑いを覚えていることに、衝撃を受けていた。
どうしてなんだ。
冷静でない自分に、目的を、感情をひとつにまとめられない自分に、臨也は戸惑っていた。自分は超人ではないし、進んで犯罪を犯せる度胸もない。普通の人間と同じように、ちょっとした中傷に傷つくこともある。だけど、善良な部分が薄く、普通の人間が良心において咎めるような、些細な『悪意の誘惑』に、人や、自分をいざなうことはたまらなく好きだった。
ここで、静雄を問い詰めればいいのだ。善良な友人のフリをして、根掘り葉掘り聞き出せばいい。刺激的で、愉快な、人間味あふれる、痛ましい事件の全容を。
そうしたいと、思っている。思っているのだ。好奇心の芽が、今まさに地から這い出し、鎌首をもたげている。
ならば何故、自分はここにいるのか。
来るかどうかもわからない静雄を、何時間も待っていたのか。

夕焼けの茜色に照らされて、静雄の肩が震えていた。

その横顔を、とても、愛おしいと思った。

だけれども、渦巻く悪意も、止められないのだ。

「どうしてこうなんだ…こんなんじゃ…」
静雄の懺悔は、深く、重い。その心がずたずたに傷ついているのが、手に取るようにわかった。
たまらなく愛おしく思えた。孤独なヒーローのような少年。その力に見合わず、頼りなげな容姿。染められた金髪は、強がりの証だろうか。
悪意と、同情と、友愛と。
同時に渦巻くいくつもの感情を胸中に遊ばせながら、臨也は、ふと、気づいた。
静雄の懺悔に比べて、今の自分の想いは、なんて希薄なのだろう…。

静雄の横顔を愛おしく思う気持ちも、事件への好奇心も、被害者への憐れみも、なにもかも。
うすっぺらい。
なんてうすっぺらいんだ。
静雄の後悔は、一生彼を縛るだろう。かつての事件がそうであったように。彼は、さらに自分を孤独の淵に追いやるだろう。明日も、あさっても、何年も何年も、彼は苦しみ続けるのだろう。
それだというのに、今の自分の想いときたら、てんで軽いのだ。
明日、あさってには消えていそうな気がする。事実、いま、屋上はまだ肌寒くて、場所を変えたいな、と思い始めている。お腹もすいてきた。ほうっておけば屋上で静雄は夜明かしでもしそうだけど、それに付き合いたいとは思わない。
作品名:you are my hero. 作家名:さわたり