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you are my hero.

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「だまれ」
鉄の塊が、顎に叩きつけられた。
そう思えた。
無論、それは静雄の拳であった。

顎が砕けなかったのは、臨也がそのパンチを予測していたのと、それでも、静雄の中に臨也を気遣う気持ちがかろうじて残っていたのと、高校生の静雄には、まだ自販機を持ち上げるほどの力はなかったからだろう。
コンクリートに派手に叩きつけられながら、起き上がる臨也に、静雄はただ、怒りだけを瞳に込め、にらみつけた。
「お前、最悪だな」
「そうかなあ、どんな友人も、こんなものじゃあないのかな。フリだよ、フリ、全部。同情するフリ、理解しているフリ、無償の愛をささげているフリ。あ、『つもり』っていうのもあるかもね」
「だまれ」
二発目は回避した。静雄のパンチは、破壊力とスピードこそ半端ないが、武道を習っていないせいか、はじめの動作で狙いがすぐに読めるのだ。どんな剛速球も、ストレートしか投げなければ打たれるのと同じだ。臨也を捉え損ねた拳は、地面を割った。コンクリートの上に、円形の亀裂が走る。
「うっわ、なにこれ、漫画?」
「だまれ!」
怒気と悲しみをはらんだ声が耳を掠める。臨也の胸が、かけらも痛まないわけではない。鬼ではないのだから。
だけど、そう、彼は…ほんの少し人より情が薄く、モラルが低く、そして…。
大いなる勘違いをしていた。



***

「セルティ、もしも、僕が君をだましていたら、怒るかい?」
『唐突に、何の話だ』
新羅が、マンションの一室でくつろぐセルティに話しかけた。
「たとえばだよ、セルティがとても落ち込んでいて、俺が一生懸命慰めている。表面上はね。でも、その実、お腹空いたなあ、とか、今見たいテレビ番組があるからはやく泣き止んでくれないかな、なんて考えていたら、キミは怒る?」
『それは、だましているとは言わないだろう』
おかしなことを言う奴だ。セルティのPDAの文末は、そうむすばれていた。
『そのときどんなことを考えていても、私は、新羅が慰めてくれたら元気になれる。それでいい』
愛しい同居人の言葉に感激した新羅は、熱い抱擁をすべくアタックをかけたが、黒い影に跳ね飛ばされた。新羅を捉える影の隙間から差し出されたPDAに、新たな文面が踊る。
『それに、わたしも新羅を励ますとき、割とべつのことを考えている』
「そんなあー!」
作品名:you are my hero. 作家名:さわたり