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【DRRR】本心【臨帝】

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「…は、はは。何、それ」

 思ったとおり、ほんのわずかな動揺を誘えた。
 この人は僕が、”自分の思ったものとは違う行動”をとることを望んでいる。
 それに応えるには、緩急が必要だと思う。
 常に非日常であればそれが日常になってしまう、と以前にこの人自身が僕に言ったように、常に僕がこの人の想像を裏切ってしまえば、それもいつかはまた予想の範疇に収まってしまうのだ。
 だから僕は、出来るだけ”安直”な返答をし、時折彼の期待する”予想外”の返答をしてみせた。
 別に臨也さんの期待に応える必要なんて、どこにもないんだけど。

「臨也さん。残念ですが僕は、だんだん貴方に飽きてきましたよ」

 いつもいつも、学校の帰りや1人で歩いている時を狙って後ろから近づいてくる。
 そして、何だかんだと僕に問題ごとや騒動を持ち込んで、僕がどう返答するのか、どんな対処をするのかを虎視眈々と見つめているだけ。
 用意周到に問題ごとを準備してくるくせに、僕が何らかのアクションを起こせば、それをひっくり返して、揶揄して、自分の考えた僕の考え方を演説して、卑下して、一定満足して帰っていく。
 最初は圧倒され、今までの考え方や常識が覆されてぐちゃぐちゃに引っ掻き回される感覚を得たし、それは僕にとって明らかな非日常で楽しめた。頭を使いすぎて、夕食も食べずに寝入ってしまうほど疲れもした。
 でも、その段階ももう過ぎてしまったのだ。

「貴方の望む僕を用意するのに疲れてきました。最初は楽しかったんですが、最近、僕の周りの人間も巻き込み始めましたし、いい加減に止めてもらえませんか?飽きて欲しいのはこちらです」

 心底困っているのだ、この人という存在に。
 僕はこれ以上ないほど眉を下げて、たぶん情けない笑顔になった。失笑とか苦笑を通り越して、駄々をこねる子供に手を焼いた親のような、いっそ愛情を感じる表情になってると思う。
 僕はもう、笑うしかなかった。
 会えば会うほど、話せば話すほど、この人は本当に子供だった。
 やけに頭の回転が悪いことにだけよく働く悪戯坊主。それがなまじ、一定信頼を得た情報屋としての地位や、人脈、その情報経路、お金、身体能力と人生経験を得てしまっただけに、手に負えなくなってしまった可哀相な人。
 それが折原臨也。
 僕の中の認識が、そうなってしまったのだ。

「もう、貴方の面倒をみるの、正直諦めてきちゃいまして」

 育児放棄って、こういうことなんだろうか。
 一人っ子で、親戚も遠く子供の面倒なんてみたこともない僕が、ぼんやりと行き着いた思考だった。

「……はは、ははは。何言ってんの帝人くん。それ、君が言うのおかしいでしょ。俺の台詞じゃない?」
「だったら言って下さいよ。”もう飽きた。君のところへはもう来ない”って。そしてもう僕の周りをくだらない騒動に巻き込んでいくの、止めてください」

 さっきまで得意げに広げていた両手が、片方を顎にあてていた。それは心理的に防衛を意味している。無意識でいて、この人は追い詰められていた。
 ほんの少し、ほくそ笑んでしまいそうになって、冷静な声を出すことを意識した。
 自分はまだ、この程度でこの人の上に立った気になってはいけない。
 ヘタをすれば、また足元からすくわれてしまう。詰めが重要なんだ、この人の期待を裏切るには。

「臨也さん」

 もう1度名前を呼んだ。
 目の前の男は、何か言い返そうと開きかけた口を、らしくもなく再び閉じた。

「もう今日は遅いです。僕は帰りますが、ついてこないで下さいね」
「え、ちょっと、何それ、随分な言い逃げじゃない」
「おやすみなさい」

 くるりと踵を返して、臨也さんに背中を向けて歩き出した。
 可哀相な人だと思う。
 無視が一番堪える人なのだ。きっと、今だって心の中では本当は泣きそうな顔をしているんだろう。
 それが、突然おもちゃを取り上げられてなのか、親に見捨てられた気持ちでなのかは、僕には分からなかった。当然のごとく、僕に臨也さんのように相手の考え方を裏の裏まで想像してひけらかすような悪質な趣味はなかったから。
 そのまま帰路についても、後方から追いかけてくる足音も、襲い来る気配もなく、僕はただ黙々と家に戻った。

 本当に、可哀相な人だ。