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【DRRR】本心【臨帝】

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 眠っている。
 と、夢の中で自覚したのは初めてだった。
 夢の中でこれが夢だと分かるという貴重な体験。ということは僕は今、完全に自分の意思を投影したまま夢を見ているということで、つまり今なら何でも出来る。

 その前方、真っ白で地面も何もなく漂っているのだと思っていた空間に、小さな黒いしみが1つ。
 近づいて見れば、子供だった。

 これは、子供の頃の僕自身だろうか。
 そう思ったのは、一瞬だった。
 三角座りで頭を膝の間に突っ込んで小さくなる子供、すぐにこれが誰かわかったのは、顔や名前を見たからではなく、これが僕の夢の中だったからだ。

「臨也さん」

 僕が呼んでも、その子供は顔を上げることも返事をすることもない。
 ただ時折肩が震えていて、どうやら泣いているらしかった。
 少年は涙声でしゃくりあげながら、小さく呟いた。

「…おれ、は…。だれかに、…ひっく、…すきに…っく、なって…ひっく」
「誰かに好きになってもらいたかった?」

 小さな黒髪の頭は、それ以上うつむけそうにない頭を更に下げて頷いた。
 膝に手を当てて、その傍で中腰になる。

「どうして?お父さんやお母さん、それに妹さんたちがいたんじゃないの?」
「…かえ…て、ひっく…こないし…、かえって…きたら、っく、…くるりと、まいるに」
「そっか。妹ばっかりで、構ってもらえないんだ」
「べっ、…つに、…りょうしん、はいい。い、なく、たって」

 簡単に強がりと分かってしまう強がりを、少年は必死にしゃっくりを止めながら言う。
 全身から寂しい、と言っているようだったけれど、絶対にそうは認めたくないんだろうな。
 その小さな背中から目を離す。
 自分の口から漏れた溜め息が、ほんの少し青い色をして空気中に漂った。
 それがだんだんと雲のように広がり、色を濃くしていきながら、真っ白だった空間を水色に染める。

 今度は、遠浅の海に浸かっているような澄んだ水色の中にいた。
 目線を下ろせば、そこには少し大きくなった背中があった。
 彼はすでに立ち上がっていて、背丈は自分の胸のあたりまでしか無いけれど、さっきまでの小さくなって泣いていた面影はすでにどこにもない。

「たにんをしろうとおもって、いろんなひとをみてみたんだけど、どこもかしこも、ぎぜんばかりだよ」
「どうだろうね」
「でも、本にかいてあった。ひとにすきになってもらうには、じぶんもすきにならなくちゃいけない。だからおれは、おれのこと、すきになってもらうには、すきになるどりょくをしないといけないんだ」

 どこから仕入れてきた情報に踊らされているのか、まだ子供なのに彼は、キッと前を睨んで言った。
 それだってまだ強がりだ。
 他者からの愛情や繋がりに飢えていて、どうすればいいのか、愛情を受けている他者を観察して、あの小さな心を痛めて苦しんで、ようやく見つけた結論だったのだろう。
 そうしてこれが、彼の今後の持論になったんだろう。
 誰よりも傷つくのを恐れ、愛を求め、そのくせ、他者から他者への感情に嫉妬して、邪魔していく。努力の方向を間違えていく。

 可哀相な人だと、自分が今日の別れ際に何度も心の中で呟いたことを思い出し、また溜め息をつく。
 その溜め息はまた青色をしていて、またふんわりと宙を舞ったかと思えば、そのままどんどんと広がっていって、水色が濃くなり、真っ青になる。
 海の中に沈んでいるように世界中が真っ青になった空間の中で、やはり少年はまた大きくなっていた。
 彼はもう、自分と同じくらいの背丈をしている。
 その背中は胸をそらして偉そうに、というか社会を斜めから見てやろうとしていた。

「いろいろな考え方が世の中にはあるものだね。もっともっと知りたい。人が何を考えて、何をもって好きという感情を得るのか。でも、好きだって?そんなんじゃ足りない。愛だよ。おれが欲しいのは」
「まだ得られなかった?」
「おれのことを好きだ、付き合ってくれなんて言うのは何人だっているさ。でもそれじゃ理由も重さも何もかも足りないんだよ。もっともっともっと、みんなおれのこと、愛せばいい。だからおれは」

 大きく上に向かって手を広げた。
 どこが上かもわからない世界だが、頭の上であることは確かで、彼は自分の声を響かせるように叫んだ。

「だからおれは、みんなを愛するよ!」

 それはもう、強がりではなかった。
 出来上がってしまった彼の根本的な理念。理想。生き方。
 彼は他者を知りたい一心でいつの間にか人間観察に長けた。そうして、ようやく得られた他者からの恋という感情が、自分のうわべだけ、顔や成績や、その他、表面上で見えるところだけで好きになられていることを理解したんだろう。それでは当然満たされなくて、叫んでいた。
 圧倒的に彼には、普通に子供が育つ上で必要だった愛情が足りていなくて、そうなった。
 飢えて、乾いて、間違えた。

「おれがみんなを愛せば、みんなだっておれを愛してくれるんだろ!」

 切望がその背中にありありと見てとれ、僕はその姿を見つめながら自分の手を握り締めた。
 自分は普通の一般家庭でぬくぬくと育ち、友人にも恵まれ、それなりな少年時代を送った。
 けれど彼は、その悪戯好きな性格も災いしているのだろう、人が人に向ける温かい気持ちというものが、どうやって生まれるのかも、どんなものなのかも知らずに大きくなってしまったのだ。
 これはもう、彼を責めることではない。
 彼の周囲の環境を責めるべきだ。
 折原臨也は、なるべくして、周りにこんなふうに作られた。