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嬉しいと悲しいの間に

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「ガイ?」
 後ろを振り返ったルークは、急に立ち止まった俺の傍まで戻ってくる。見上げてくるその顔は怪訝そうだった。
「どうしたんだよ」
 伸びてきた小さな手にシャツを軽く引っ張られて、それにつられる様に腕を伸ばす。
「うわっ、痛! ガイ、やめろよ!」
 乱暴なぐらい力を込めて頭を撫でてやると、咽喉の奥から笑いが洩れた。
「何笑ってんだよ! バカ!」
 ルークは乱暴な手からすり抜けて離れていく。その後ろ姿に力が抜けて、ぐらりと膝をついた。それでも咽喉からは変わらず、抑えきれない笑いが零れる。
「ガイ、なあ、どうした?」
 様子のおかしい俺が気になったのか、目の前に影が落ちる。顔を起こすと今度は俺がルークを少し見上げる事になっていた。ルーク、お前……以前のお前なら、すぐに気付いたよ。今の俺はおかしい。異常だ。きっと笑い声にも、顔にも、狂気と憎しみが隠せきれてない。俺は笑っているんじゃないんだ。
 思い出した。そんなに前のことでもない。危なっかしいながらもまともに歩けるようになったルークの手を引いて、今や屋敷が砦の意味を成した部屋からこの中庭に初めて出た日。柔らかい風。花の匂い。陽の光。濁りのない水路。全てに驚いて、子どもは楽しそうに笑った。その顔を見て、胸によくわからない暖かさが広がった。
 思い出した。それよりもだいぶ前になる。部屋で世話をしながらも、俺は何をしているんだ、これは憎んでいたファブレ家の長子だぞと、目の前にいる子ども相手に急に腹の底が熱くなった日。俺の表情を見て怯えた子どもに、慌てて笑顔を取り繕った。その笑顔に安心したようなそぶりを見せるのに、表情から感情を理解できるようになったのかと感じ入るものがあった。
作品名:嬉しいと悲しいの間に 作家名:鼻水太郎