SSS×3本
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太陽が沈む頃
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オレンジ色に染まっていく世界を隣にすわる水谷とただ眺める。お尻とお尻の間で俺の左手と水谷の右手が固く結ばれていて、熱くなってくる。
じっとりと汗ばむ手のひらから溶け合って一つになりそうな感覚は、まるでシーツの海に二人溺れる時に似ていて少しだけ恥ずかしい。
どうかしたのと耳打ちされて、唇が耳に触れるくらいの距離を近いよと言い咎めたかったのにそれができないのは、今のこの状況全てが水谷のご希望だからだ。
俺ね俺ね、あの小さな公園の隅にあるベンチに二人で手つないで座って、ないしょ話みたいに小さな声で話してね。
そんで夕日が地平線に隠れるのと同じ時に、栄口とキスがしたいな。
星が空に浮かぶ部活帰りに水谷がご機嫌で言ったその言葉はまるで魔法がかかったみたいに甘やかで煌めいていた。
でも毎日毎日こんなに夜遅くまで部活があったら絶対無理だよねぇ。
だから、今ちゅーしよ?
生ぬるい風と星と月だけが見守る夜空の下でキスをしたのは昨日のこと。
だからいつものように朝日と同時に自転車を転がして、朝練をしている間はきっとしばらく水谷のあの願いは叶えてあげられそうにないなぁと少しだけ寂しく思っていたのが、監督が突然放課後の部活を中止にすると言った時、無意識に水谷と目があった。
あの甘やかな言葉には本当に魔法がかかっていたんじゃないかと、オレンジに染まっている水谷の嬉しそうな顔を見て思う。
太陽が沈む時にキスがしたいと言っていたから、きっともうすぐその唇が俺のに重なるんだろう。かさついた俺のとは違う、リップクリームで手入れされてい唇は柔らかいから、俺も水谷と早くキスがしたい。
早く太陽なんて沈んでしまえば良いのに。