二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Cb.Senza sordino

INDEX|3ページ/9ページ|

次のページ前のページ
 


-----


「……大丈夫?」

指揮棒を取り落としてからは散々だった。阿部には怒られ、阿部以外のメンバーには笑われた。普通に笑ってくれたのなら構わない。調子を合わせて気を取り直せば良いから。
けれどメンバーが浮かべた笑いは苦笑いや失笑という類いの笑いで、隠れる場所の無い台の上でうなだれるしか無かった。
だから指揮なんて嫌だったんだと栓無いことまで考えて、慌てて心の中で首を振る。
幼い頃に聞いたピアノが忘れられずに、そのままファンになったピアニストがいた。そのピアニストは本来作曲を生業としていると知って同じように作曲の勉強を始めたのは中学生の時で、音楽高校の作曲・楽典科に上がってからそのピアニストが指揮も振ることを知り、大学では指揮科を選んだ。
人前に立つのは好きだけど苦手だった。だから、受験当日まで指揮科をうけて本当に良いのかと悩み続けた。
三年まで上手くやってきたけれど今すぐに辞めたい衝動に駈られた俺を助けてくれたのは、憎たらしいけれど同じ高校からの付き合いのある阿部だった。
中断された場所の少し前の小節番号を声高に叫び、その先を譲ってくれた。
すみませんと謝りながら続いた演奏はやはり完璧で感動のし通しで、緊張も相まってその後二時間の練習がどのように進んだのかまったく記憶に無い。

練習を終え、希望者だけが参加している飲み会に集まったのは20余名。オケの半数程が酒を片手に話しに花を咲かせているのを隅で眺めていると頭上から高めの男の声が降ってきた。
見上げた先にいたのはビールが半分程入っているジョッキを片手に持ったコンバス隊のリーダーだった。

「隣いい?」
「あ、うん…」

人生最大の失敗を嘆いて高いテンションの輪から離れて手酌で慣れない日本酒を楽しんでいた隣に腰をおろした栄口は、手に持っていたジョッキに唇を当てようとし何かに気付いたように顔を上げた。

「乾杯しよっか」
「何に?」

ジョッキを傾けて笑う栄口にゆっくりと猪口を近付けながら聞いたら、栄口は困ったように眉を下げるので笑って言った。

「指揮者的にあり得ない失敗にかんぱーい!」
「えー!」

抗議の声を無視してコツリと合わせた猪口の中身を煽ると栄口も渋々といった態でビールを飲み込む。ふぅ、と一息ついて徳利に手を伸ばすと栄口がそれを掴みあげて酒を注いでくれた。

「栄口のソロ、良かったよ」
作品名:Cb.Senza sordino 作家名:東雲