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【DRRR】 emperor Ⅱ【パラレル】

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溜め息の音が、広いリビングにいやに響いた。
恐らく、全てを知っているのだろう臨也が、目線をこちらに向ける。

「わかったよ。もう、俺だけの情報にしときたかったんだけど、そんなこと言ってられる状況でもないしね」
「お前、アレを説明できんのか?」

静雄が頭を振りながら言う。どうやらはぐらかしていたのではなく、本当に静雄には説明できないらしい。アレ、というのは帝人くんのことだろうか。それとも2人をそこまで追い込む現象のことか。
臨也は、肺の中の空気を吐き出すように言う。

「残念だけど、さすがの俺も、あの歌と一緒に起こる現象については言い表せないよ。抽象的な詩人みたいな表現しか出来ないね。でも、事実を言えば」
「事実?」
「帝人くんはかつて、”エンペラー”と呼ばれた『天使の歌声』を持つ存在だよ」

頭の中に、すぐそこの棚に入っている1枚のCDアルバムがフラッシュバックする。
かつて、それを見せた時に不可解な混乱を起こしたのは、その帝人だった。

「はあ?」
「あれが、帝人くん?」

驚く、ということは、静雄も知らなかったのだろう。いや、その後の表情を見れば、少なくとも心当たりはあるようだ。
更に大きなため息をつきながら臨也は椅子の背にも垂れて天井を仰いだ。

「そう。『この世で最も美しい音楽』とか、『ヴァルハラの歌声』、『音楽の神に祝福された天使』なんて有名なフレーズで世界中から賞賛を受けた、あの”エンペラー”だよ」
「お前、それ、どこで?」
「確たる証拠は得てないさ。でも帝人くんは極端なほど”エンペラー”の曲にもジャケットにも拒絶反応を示していた。そして帝人くんは執拗にネット上からその話題や存在を消そうとあちこちで工作してた。どう考えても”エンペラー”と”みかど”が関係しているとしか思えないでしょ?」
「…その上で、あの、歌」

ビクリと、静雄がその刃物すら刺さらない強靭な体を振るわせる。
その反応が、帝人が静雄の人質として連れ去られ、その犯人ともども、全員が見たという『天使』の正体なんだろう。
歌、か。

「それ、君達にまでそんなに影響するほどの歌だったわけ?僕だって何度もCDは聞いてるよ」
「そんなん比較じゃねえよ」
「あれは、歌というより感情とか言葉とか、そういうものなんだ。その場にいなければわからないね」

またしても意見の一致をみる2人を交互に見る。

「まともに何度も聞けば、確実に廃人になると思うよ、俺は」
「あれはヤクに似てんじゃねーか。ものすげー効くけど、中毒んなって、いつかは死ぬみてーな」
「劇薬?ドラッグ?」

褒めちぎっているのか、貶しているのか、よくわからないが2人に与えた衝撃は相当なものだったことだけは簡単に予想がついた。
そこまで言われると聞いてみたいという衝動に駆られているところに、臨也の携帯が鳴る。
そのほとんどが全く関係のない仕事の話であったり、収穫がないという報告であるのに、そのたびに部屋の中がいきり立った。
そして今度もやはり、ただの報告。
全員が肩を落としたところで、今度は静雄の携帯が鳴った。
ずっと沈黙していた携帯の音に驚き、静雄は半ばへし折りそうな勢いで通話ボタンを押す。

「は、はい、…ああ、幽か…、どうした?………帝人に会った!?」
「なっ!?」
「おいどこで、………音楽会社ぁ?………で、いつだ?……そっか。わかった、ありがとな!」

期待で力を込められたせいで、静雄に渡していたアルミコップが紙のように小さく丸められている。
静雄の呟きを聞き取った臨也がペンを走らせ、そのメモを受け取った静雄はその内容をもう1度幽に確認してから、電話を切った。

「……よしっ!!!!」
「うん、行くよ」

これはもしかすると、最強と最凶が組んで最悪になった、戦争のハジマリのゴングかも知れない。
セルティにメールを送りながら、結局自分も付いていくことにして、新羅は溜め息をついた。
こんなに見逃してはいけない出来事は、そうあるものじゃない。
戦争なら、戦医も必要でしょう?