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【DRRR】 emperor Ⅱ【パラレル】

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張り詰めた空気の中、突然、臨也の携帯が鳴った。
切られる集中に苛立ちながら、液晶画面を見て臨也の眉間に皺がよる。
ああ、そういえば彼から連絡が来ることも想定内だった。

「やぁ。かかってくると思ってたよ。帝人くんのことでしょう?今……は?何………」

情報は何でも欲しい。
静雄と新羅は、電話での会話内容を汲み取りたくて聞き耳をたてながら、なおも映像を巻き戻し、再生し、別のテープに入れ替える。

やがて、臨也は自嘲気味に笑い、今までの焦った態度よりもよほど彼らしい、不遜な態度を見せて電話を切った。

「何って?誰だったの?」
「君たちは知ってるかな?紀田正臣って言って、帝人くんの幼馴染なんだけど」

その名前は、銃で撃たれたときに聞いている。静雄は一瞬そう思い、だが帝人には関係のない話だと完全に脳の中から閉め出した。
今は何もかもがどうだっていい。
あの陽炎のように消えてしまった不確かで希薄な存在。自分がそれまでもとても大事にしていた友人。自分ですら止められない自分を唯一抑えることの出来る者。
取り戻すまで、何もかもがどうだっていい。

「その紀田くんがね、心当たりがあるんだって。…それも、ここに」
「ここって、この会社?」
「今向かってるそうだよ。詳細はその時、って言われちゃったんだけど」
「ここじゃマズイだろーが」

3人は狭いカメラルームを見渡した。すでに少しの身じろぎで肘や肩が当たるほどのギュウギュウな状態である。
さらに開けっ放しの扉の向こうでは、社内の人間からこの情報漏洩がバレないように2重監視をしている監視員が、挙動不審なほどキョロキョロと周囲とこの扉の方を見返している。
さすがにここで何か始めるのはマズイ。

「シズちゃんにしては、まともな意見だね」

そもそも考えもなしに一直線にここへ来た時点で、彼らはまともな判断能力というものに欠けていたようだ。
普段の用意周到さからは考えられないような突っ走った行動を振り返り、臨也は苦い表情をする。自分より当然目下、ただの駒からの有力な情報提供という、彼にとって腹の立つ行為によってようやくいつもの彼らしさが戻ってきていた。

「何だと、てめぇ」
「はいはい、ちょっと冷静になったら途端に喧嘩し始めるのやめてよね。仕方ないなぁ。…この近くに私が懇意にしている医療器具メーカーがあるから、そこに少し場所を借りれないか当たってみようか」

新羅が懇意にしている、ということで、当然それ相応の適度に薄暗い面を持った場所であるのは確かだった。
とりあえずは、ずっとここに篭っているよりはいいだろう。もうそれ以上、監視カメラの映像から得られる情報もなさそうだった。
最後に、例の肥満体型の男が部屋に入って行く場面を見つめ、臨也はふと停止した画面に映る男を指差した。

「思い出したよ、この男。…この会社の代表取り締まり役、つまり、社長だ」