二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
cou@ついった
cou@ついった
novelistID. 13083
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

【DRRR】 emperor Ⅱ【パラレル】

INDEX|13ページ/19ページ|

次のページ前のページ
 

9.母親の独白




「どうして連絡くれなかったんスか臨也さん!」
「ごめんねぇ?すでに東京にいなかった君が、帝人くんの居場所の詳細を知っているとは思ってなくって」

新羅が取り計らった後、先ほどの音楽会社から数百メートルしか離れていないビルの6階に、それぞれの面々が揃っていた。
目撃情報があった、という連絡を受けたセルティはすぐに駆けつけたものの、会社の中に入るわけいも行かず近くの街路樹の影で隠しきれない姿を何とか隠そうとしていたらしい。新羅はセルティを見つけた時には、その中途半端に茂みに隠れた様を絶賛し、そして殴られた。
その後すぐに合流した正臣は、噛み付かずにはいられない、と言った形相で、臨也にけしかけている。

そもそも正臣が東京を離れていた理由といえば、臨也に嵌められて抗争が起こりしばらく姿を消す羽目になり、さらにその臨也のパシリをしていたからである。
それもこれも、臨也の大好きな人間観察と社会的混乱のため。
そしてより遠方へわざわざ用向きを作っていたのは、臨也が帝人からこの幼馴染を遠ざけ、『帝人くんが頼ってくる存在』と、『歌に関して暴走した際のストッパー』という大きな役割を奪って自分の物にした優越感と、取り返されることのないように牽制するために行われていたことだ。
彼が正臣に連絡するはずがない。

「昔のツレがたまたまダラーズをやめてなくて、たまたま掲示板を見てそれを教えてくれてなきゃ、俺は知りもしなかった!」

その偶然を恨むよ、と臨也は心の中でだけ思う。
今は何だって帝人に関する情報が欲しい、でも、この少年からだけは欲しくなかった。
彼らがともに過ごした時間と、幼馴染であるという絆の強さは、彼から役割を奪ってなお、自分が負け劣ると認めざるをえない部分だったからだ。

「それで、君は何を知っているっていうのさ。前に君は帝人くんが歌を歌わない理由も知らないって言ってたじゃないか」
「…何でそのことを臨也さんが知ってんスか?帝人が昔に音楽恐怖症になって、声も出なかったこと、俺あんたに話しましたっけ?」

音楽恐怖症で、声も出せない。
それは紛れもなく、今朝まで臨也の腕の中で眠っていた帝人の状態に酷似している。
やはり、コイツはいけ好かない。あの状態の『天使』であった生き物を知っているのは自分だけでいいのに。そう思えば思うほど、冷静に皮肉が言えるのだから不思議なものだ。

「この俺の知らない情報なんて、この界隈ではほんの一握りしかないんだよ。今回のような例外以外はね」
「…じゃあ、その頃の帝人に何があったかまでは、知らないですよね?」

両手を広げかけた臨也の動きが止まる。今の口ぶり、彼は知っているのだ。

「お前、何か知ってんだったらさっさと言え!」
(今も帝人くんがどうなってるかわからないんだぞ!?)

静雄とセルティが、半ば脅迫的な勢いで正臣に詰め寄った。
この2人とはほぼ面識のない正臣だ。そもそも親友がこんな都市伝説や闇医者や、絶対に近づくなと注意までした喧嘩人形と情報屋と仲良くなっているとは、これっぽっちも知らなかった。
迫力やら衝撃やらで、もっと臨也を牽制したくなる気持ちが飛んでしまう。

「お、俺もついさっきまで知らなかったんスよ!!子供の頃のことだし、幼いから教えて貰えなかったみたいで。何か帝人の様子がおかしくなってから失踪したって聞いたんで、何か関係あるんじゃないかと思って親に電話してみたんスよ」

帝人の親と正臣の親は、引っ越してからも時折連絡をとる程度に仲がいい。
近所に住んでいた頃にはそれなりに交流があったし、あの頃のことでも、たった今のことでも、何か聞いているんじゃないかと思っての行動だった。

「そしたらおふくろが、”エンペラー”の、あの頃のことかって」

正臣は知らなかった。
頑なに歌うことを拒む親友が、実は世界的に有名なシンガーだったなんて。

そして、正臣の母親は、知っていた。


かつて、帝人の母親が悩みを相談してきたことがあった。
帝人の歌を東京の音楽プロダクションが気に入って呼んでいるという話だったらしい。
まだ小さな子供にそんなことをさせるのは本当に正しいのか、でももしかしたらそれが彼の実りある将来に繋がるのではないか、など母親の葛藤があったようだ。
正臣の母親は彼同様楽天的な性格をしており、話が来たのであれば何にせよ1度やってみたらどうかとアドバイスした。
その後少ししてから、約半月ほど、帝人とその両親は家を離れた。

当初の予定よりも戻ってくるまでの期間が長く、きっと上手くやっているのだろうと思っていた。
しかし、ようやく帰って来た親子の様子を見て彼女は自分のアドバイスを激しく後悔した。
帝人は子供らしい笑顔をしなくなっており、普通に話はするものの、活気がなく、話を聞けば彼は以前のように歌えなくなったのだという。


「おかしくない?帝人くんは、話すことも出来なくなってたんでしょう?」
「いえ、確かに帝人は、帰って来てすぐは普通に会話してました。それからなんですよ」


正臣の母親の元に、再び帝人の母親は悩みを相談しに来ていた。自分が早って息子を連れて行ったばかりに、逆にその芽を枯らせてしまったと。
そう自分を責める姿を見ながら、正臣の母親もまた自分を責めた。無責任なアドバイスをしたばかりに、この親子を不幸にしてしまったと。
だからこそ、彼女は幼い正臣が学校から慌てて帰宅し、まくしたてて言った内容に奮い立った。
「みかどが、へんなおじさんにつれてかれた」
1人の母親としての使命感もあった。でもそれ以上に、自分の無責任な言葉を返上できる好機なのではないかと。
だから彼女は、警察に通報することなく、自分の足で駆けていったのだ。