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【DRRR】 emperor Ⅱ【パラレル】

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「……おい」
「おふくろがバカなことしたってのは俺も思ったし、本人もそう言ってましたから、勘弁して下さい。これはもう過ぎたことの話なんスよ、平和島さん」


居場所はすぐに分かった。大音量で、最近に聞いた音楽が聞こえたのだ。帝人の母親から聞かせてもらった、帝人の歌の録音テープだった。
その音を頼りに向かったのは、音楽室。
そこで、奇妙なものを見た。
そして荒い息に紛れた野太く掠れた声を聞いた。
『私の天使』と。

すぐ後を追って、聞きつけた教師陣が集まり、そこで音楽会社の副社長だという男と帝人が発見され、両親が呼ばれひと騒動になった。
再び無理やり歌わせようとしていた、と諍いになったものの、結局は警察沙汰にはならず、帝人の両親は数々の条件を出すことで示談にした、ということだった。
正臣の母親が第一発見者として、帝人の母親から何度も感謝された。
しかし正臣の母親はついに言えなかった。自分も子供を持つ母親として、同世代の男を夫にもつ妻として信じられなかったからだ。
音楽室で、男が帝人の服を捲り上げ、乗りかかっていたという光景が。


「っ!?」
「……つまり、帝人くんは襲われてたの?」
「………そういう、…ことになるみたいです…」
「反吐が出るね」
「はい」

結局、正臣の母親はそれを言うことが出来ず、示談はすでに成立した。それでも、しばらく帝人は声1つ出ない状態になっていた。
酷い後悔に苛まれながら、彼女は息子に、出来るだけ普段通りに帝人と遊ぶように言い、そして実際にそうして遊びにやっているうちに、帝人はやがて戻っていった。歌うという行為以外全てが。
その後、夫の仕事の都合で引っ越しをして、そのままになってしまった。
けれど言えなかった自分の見た光景はずっと棘のように彼女の心の中に刺さり続け、正臣がその頃の話を聞こうとしてきたとき、ついに腐っていた棘の正体をようやく口に出せたらしかった。
遅かった。
彼女はもっと、早くにその事実を言っておくべきだった。


「ねぇ、冷静になって今の話をまとめる前に俺、爆発しちゃいそうだから言っておくよ」

珍しく、臨也が本気の怒りに肩を震わせている。
彼のものだった天使がすでに汚い手で地に引きずり落とされていたという事実が、あの幸せな時間をぶち壊されるような感覚が、彼の逆鱗に触れていた。

「その時代に代表取締役代理、つまり副社長を務めていた男。今の、社長なんだよ」

白い布をちらつかせる、太った男の映像が脳裏に浮かぶ。

「上等じゃねーか、オイ」

そこに帝人がいたかどうかは定かではないし、わざわざ帝人がそこに向かう理由もさっぱり見当が付かない。
しかし紛れもなく、静雄の額に絵には描いたようにはっきりと血管が浮き上がった。

「帝人がいてもいなくても、あの男をぶん殴る」
「もう2度と世間に顔向けできないような状態にしてやらなくちゃ、気が済まないよね」

団結している2人の様子を初めて見る紀田正臣は、背中に寒いものが走るのを感じた。
黄巾族のリーダーをして毎日喧嘩に明け暮れていた頃も、ダラーズと諍いを起こしていた時にも、これほどの強い殺気は感じたことがない。
初めて戦地に立った歩兵なら、こんな気分がするだろうか。
自分に向けられているのではないのに、冷や汗が出るほどの殺意というヤツは。