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【DRRR】 emperor Ⅱ【パラレル】

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病院の敷地を出たところでちょうど停車していた車に乗せてもらえないか声をかけた。
久々に喉を使って驚いた。
普通に声を出したつもりが、口をついてでるものが全て、あの風が吹き漏れるような特別な音になってしまう。
その理由も、そもそもその声をどうやって出してどうやって止めていたのかも思い出せないまま、それでも目的地を告げれば、快く乗せてもらえた。
そこで女性から携帯を借り、指が慣れたままの動きで検索を始める。
目的の人物は、すぐに見つかった。
目的地の変更もない。

車に乗せてくれた男女は、何も聞かずに帝人を目的の場所まで連れて行ってくれた。
それどころか、携帯を無償で貸してくれた上に途中に寄ったコンビニで飲み物も買い与えた。
携帯を返しお礼を言う。
そうすると、男女はようやく疑問を投げかけた。

「もしかして、”エンペラー”、さん、ですか?」

自分の声が、今やそれしか出ないことを知っていて、帝人は風を吐息に乗せ、少し低く甘い声で歌うように応える。

「…ええ、そうですね。そう、呼ばれていました」

特別な響きが空気を震わせて耳へ送られる。
今初めて、自分が”エンペラー”の存在を認めた、その瞬間なんだ、と相変わらずいまいちはっきりとはしない意識の中で思った。
アレをしよう、コレをしよう、と計画的な考えは妙によくまとまるのだが、それ以外のことはもやがかかったようによく思い出せない。
自分がこれから何をどうしたいのか自分の希望すらもよくわからない状態なのだ。
ただ、罪は裁かれなくてはならない、という信念だけが自分の足を前に出させる。
男女はそれ以上何も聞かずに、幸福そうな表情で別れを告げた。
きっと、彼らはその正体を知ったからと言って何もしないだろう。精々、とても身近な人間にほんの少し漏らすぐらいに違いない。
そう信じて止まない。
感情を乗せたのだ、さきほどの返答に。

『秘密』『隠しておいて欲しい事』

感情が、言葉にするよりもはっきりと吐息に乗り、口をついて出る。そういう音として。
その音が、心を縛りますように。自分から出たこの声がそういうものであって欲しい、と帝人はぼんやりと思った。
そして、実際それに似た効果があるとも思う。
何たってあの池袋最強と、新宿最凶が黙って動くことも出来ずに自分を逃がしてしまうのだから。
自分が望んで止まなかった非日常が唇に乗る。
だがそれは、けして望んだモノではなかった。かつて自分が捨てたものだったから。