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【DRRR】 emperor Ⅱ【パラレル】

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それは、詳細に言えば違っていた。
ある者はそれは神であったと言い、ある者は天啓であったと言った。
天国に行ったのだと勘違いした者もいれば、それが死ぬ直前に見る光だったという者もいた。
ただ、全ての意見を統括してしまえばこういうことだ。
全員が、この現実世界では到底考えられないような、特殊で宗教的な、神々しい何かを感じていたのだ。
トムがそれをまとめてしまえば、先ほどの発言に行き着いた。

「えっと、『天使を見た』、ですか?」
「そ。竜ヶ峰は見てないか」
「えーと、僕は…」

キリリと喉が痛む。
天使がどうしたって?天使、昔に聞いたことがある気がする、そうだあれは。



『この世で最も美しい音楽』
『ヴァルハラの歌声』
『音楽の神に祝福された天使』

『天使の歌』


 ―――っ!!

全身から血が抜け出たかと思うほど、一気に体温が下がった感覚に囚われた。
咄嗟に歯を噛み締めなければ、震え出しそうになった。吐き気がしそうなほど、天井と体がグルグル四方八方に回る感覚。胃が上から押さえつけられているように重く痛い。
怖い。
怖い。

そうだ僕は、僕はあのとき静雄さんを止めたくて必死になっていた。
そして藁にも縋る思いで、過去の記憶と、自分の体が出来る唯一のことをした。


 僕は、ウタをウタッタのだ。


「あ、ああああ」
「竜ヶ峰?」
「あああああ、ややややややあああああああああああああ!!!!」

次の瞬間に帝人の口から漏れたのは、悲鳴にならずに不完全な音として漏れたような絶叫。
明らかに異常な事態。
トムは声もなく立ち上がり、そのまますぐに廊下に出て看護婦を呼んだ。
異様な声を聞きつけて、すでに何人かがこちらに向かっていた。

帝人は自分が、声を出すということにも怯え、強く両耳を押さえながら絶叫していた。

「帝人くん」

その手を優しく掴んで引き離す。
怪我をしている側も関係なく動かしたため、肩から腕に巻かれた包帯の一部には血が滲んでいた。それをいたむように更に優しい声で。

「帝人くん。ほら、大丈夫。今、音楽は鳴ってない」

耳に直接注ぎ込む声は、歌う響きにならないように細心の注意を持って、限りなく優しく染み込まされていく。
その黒い服は、病室では死神にも見えた。

「ね。大丈夫だよ。俺が守ってあげる」

甲高い声が止む。
トムと看護婦たちが病室に戻ってきた時には、叫ぶことを止めた帝人がぼんやりとした表情でその体をくたりと預けていた。
よりにもよって、折原臨也の腕の中に。