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【DRRR】 emperor Ⅱ【パラレル】

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7.天国への切符



こんなにも上手くいくなんて思ってなかったよ。

折原臨也は携帯を操作する手を休めずに、ニヤリとした笑顔を更に深める。
そのもう片方の腕には、くたりと眠る体を抱いている。
携帯画面はダラーズの掲示板を開いていて、そこには『平和島静雄が仲良くしていた高校生が人質に取られ、大怪我をした』といった内容が話題に挙がっている。
それがどんなふうに紆余曲折して、様々な尾ひれをつけていくのかは、今から十分に楽しみだ。
すでに、あの平和島静雄までもが4ヵ所の骨折を始めとした大怪我をしていることと、警察に任意で事情聴取されたことも流れていた。
物騒なことだ、誰か病院関係者でもいるのだろうか。
そこに、1つの話題を提供する。

『今回の騒動で、全員が入院する大怪我を負ったのに、誰も被害届けは出さないそうですよ。それどころか、襲った方が謝罪して慰謝料払うんだそうです』

嘘の情報も、誇大に広げた話をしているわけでもない。ただの事実だ。
それだけで様々な想像や憶測がこのネット上に広がり始める。
誰かが『天使を見た』という情報を流すのはいつになるだろうか。それとも頃合を見て自分が流してみようか。
楽しみだなあ、楽しみだなあ、楽しみだなあ!

その天使は、俺の腕の中にいるというのに。

「帝人くん」

彼は眠っているらしく、寝息すらほとんどしないままその体を俺にもたれさせて無防備さを晒している。その様子には、多少の満足感と愛おしさすら感じた。
安心しきった眠り。
俺はこの世界中から『神に愛された者』と認められた存在に、今、絶対的な信頼を寄せられているのだと思うと、腹の底からくすぐったいような熱さが上ってくる。

本当に簡単だった。
平和島静雄に恨みをもっている者なんて山といるし、その中でも暴力的な集団を探し出すのも時間はかからない。
その集団に「帝人くんに危害を加えないこと」を条件に、平和島静雄に対して圧倒的に優位に立てる方法とその手段を与えれば、その後の展開は赤子の手を捻るよりも楽な工程。
倉庫の2階、壁際に沿って造られた渡りの上から、下で起こる惨劇をただ見ていればいいのだ。
まさか、次々に大砲のように人間が下から投げ飛ばされてくるとは思わなかったけれど。

帝人くんが歌うかどうかは、一種の賭けだった。
コレで駄目でも、シズちゃんは確実に殺人か暴行で捕まってくれるし、俺がそこに救世主のように現れればどうにしろ帝人くんの信頼を得られる。そうすれば、後はまた別の手を使って、彼が自分から歌うような状況にまた仕組めばいい。
今度は俺自身をだしにして。

要するに俺は、聞いてみたかった。音源越しではなく生の『天使の歌声』というヤツを。

竜ヶ峰帝人という、ありきたりで普通な高校生。
それがダラーズというカラーギャングの創始者で現在の管理者、いうなればリーダーについていることが面白い。
彼の時折見せる突拍子もない思考や、無茶な行動、一部の人間にだけ見せる冷徹な表情。みんなみんな面白い。

それが、まさかの『過去の秘密』まで持ち合わせているときた。
それを暴かずして、何が情報屋だろう。俺は知りたい、もっと彼を、いろんな表情を、情報を。

「ああ、出てきた。意外に早かったね」

手元に光るディスプレイに『天使』の文字が躍った。
確かにこの情報は知ってしまったら誰かに伝えたくなる、ゴシップのようで本当の話。
我慢できずに流してしまうのもよくわかる。
その情報を、眉唾ものとして貶すもの、素直に驚くもの、詳細を聞きだそうとするもの、一蹴するもの、様々な言葉が溢れていく様子に、また笑いが浮かんでくる。
彼らにこの録音を聞かせたら、彼らは信じるだろうか。
この世に本当に天使が降り立っていたということを。