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【DRRR】 emperor Ⅱ【パラレル】

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そのまま言葉もなく立ち尽くしていると、臨也はさっさと帝人の手を引いて歩きはじめた。
目の前を通り過ぎて、病院の中へと入っていく姿を静雄は呆然と見送る。
見送るしか出来なかった。
しかしそれでも、自動ドアが閉まる前に、一瞬だけ我に返って振り返る。

「これだけは、教えろ!」

自分をこの世で唯一抑えることの出来うる存在を確かめておきたかった。
静雄の意図はただそれだけだった。

「あの時の、あの歌は、帝人なのか!?」

その瞬間、かつてないほどの殺気を込めた臨也の視線が送られる。
そして…。

閉まりかけた扉が、それ以上歩こうとしない存在に反応して止まり、開いては閉まろうとしてまた開く。
ビリビリと、その薄い窓ガラスが震えた。

「っ一番、言っちゃいけないことを!!」

臨也は一瞬本気で殺そうとした静雄のことなど、次の瞬間には捨て置いて、帝人を抱きしめる。
そしてその腕の中に小さな声で必死に何かを呟いた。
それでも、ざわざわと体の奥がざわめく。

あの歌声に毒を植えつけられた者が反応する、特別な気配。

「…あ、ああああ……」

それは、普段の声よりも甲高い、帝人が取り乱した時に発する悲鳴に近かった。
だが次の瞬間、抱きしめていた臨也が全身を硬直させて後ずさり、距離をとったことで帝人の顔が外に出た瞬間に。

「――――――」

それは、声、ではない。
確かに声であったはずなのに、それは声ではない。
歌でもない、ただ1音を発しただけの、抑揚もないただの音符1つの音。
それが。
全身を痺れさせる。

一息、息が続くだけの時間だった。
20秒も無かった。
ただの母音の「あ」の発声だった。

それなのに、世界が造り変わってしまったように、その周囲は時間を止めている。
体に刻み込まれた歌という刺激を覚えている臨也と静雄は、指先1本動かさずに、立ちすくんでいる。
まだたった1音、短い時間だったから立っていられた。
気を失ってしまう者の続出したあの倉庫内に比べれば全く違う。
それでも、しばらく体を動かすことは出来そうにない。

その中を、フラリと、白い羽のような体が踊るように通り過ぎて行く。
振り返ることも足音をさせることもなく、帝人はゆったりと病院外へと向かって歩き始めていた。

(帝人くん)
(帝人!)

臨也も静雄も叫ぶつもりで、しかしその声は出ない。
恐らく、先ほどの音に乗せられた言葉ならざる言葉、想いが影響しているのだろう。
以前は様々な感情を織り交ぜた確かな『愛』を感じた。
今は、『無言』。
無言と言う名の感情が込められていた。

そのまま唯一動く眼球で真っ白な姿を追い、2人は帝人を、見失った。