Götterdämmerung
正臣が転校していった。親の仕事の都合だから仕方がないが、やはり子どものままの自分が歯痒い。出来ることが圧倒的に少ないのだ。
精神だけが老成してしまった帝人にとっては、経済的にも肉体的にも子どもであることが我慢できなかった。何をするにも親の許可と庇護がいる。
唯一良かったことは、インターネットがこの田舎にも普及してきたので、正臣が転校したことを切欠にパソコンを購入してもらったことだろう。これで、行動範囲がぐっと広まった。
16歳の時には集められなかった情報が、今ならば簡単に手に入ることがある。システムの世界は日進月歩。セキュリティの甘さもそうだが、情報社会の怖さがまだ浸透していない時だからこそ付け入る隙がある。
以前の記憶を頼りに『表』と『裏』に網を張る。
0と1の世界では、自分は幼い竜ヶ峰帝人から年齢不詳の田中太郎になれる。
さて、ダラーズを始めましょうか。
作品名:Götterdämmerung 作家名:はつき