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Götterdämmerung

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都会とは違い、田舎には街頭が少ない。夜になると自然の灯り以外では真っ暗になってしまう。
車のヘッドライトで照らしながら男を取り押さえるのを見ていた四木は、僅かな音に周囲を見回した。
月明かりだけが頼りの暗闇の中、その少年は立っていた。
大きな瞳に眩いばかりの光を湛え、口元の口角は淡く釣り上がり、とても楽しそうに、同時にとてもツマらなそうに、とても冷静に四木たちのことを見ていた。
それの目がツイと四木の方へ動き、二人の視線が交差する。
その瞬間に四木は直感した。この少年は何かある。
田舎は余所者を嫌う。ヤクザなど持っての外だ。それに四木は無闇に騒がせるのを好まない。そこで人気がなくなる深夜を狙って密かに男を捕らえることにしたので、このことを知っている土地の人間はいないはずだった。それなのに―――
しかも、子どもならば怯えるはずの出来事を静観している。
四木は少年に近づくと、ごく丁重に話があると車に誘った。普通ならば明らかに怪しい誘いには乗らないだろう。しかし子どもは、コクリと一つ頷いた。
何故この時間にこの場所に来ていたのかと尋ねた四木に、少年は一言「知っていたから」と答えた。そう言って微笑んだ子どもを、四木はそれ以上追及することなく帰した。なぜ始末しないのかと問う部下に、四木は「彼は口外するなどという愚かななことはしない」と言って黙らせた。だが真実は少し違う。確かにあの少年が賢いことはすぐに分かったが、それ以上に四木は彼に惹かれたのだ。一言でいうなら、一瞬でイカれてしまったのだ。
あの少年のことをもっと知りたい。手に入れるだけの価値が彼にはある。
その後、すぐに少年のことを調べさせた四木の手元に、興味深い情報が上がってきた。
名前、住所、生年月日、通っている学校、親の職業、交友関係、そして彼が持ち得るネットワーク。
若干10歳にして彼はあの巨大組織を管理し、そこに渦巻く情報を駆使していた。四木の情報をリークしたのも彼だ。
欲しいと思った。
彼を手中に納めることが全ての近道に繋がると四木は直感した。
間もなくしてコンタクトを取った四木に、少年―竜ヶ峰帝人はまるで分かっていたかのように友好に対応した。
そして中学校へ入学するのを期に東京に来ないかと、四木は帝人を誘った。両親との交渉もこちらがするし、充分なセキュリティー設備のある住まいも提供する、生活も困らせない、と。
四木の話を聞いた帝人は。それに一つの条件を出した。
それは、粟楠会の子飼いにはならない、ということ。
もしそれが叶わないのならば、現在のままで良いと。飼い殺しにされるつもりはない。いずれは東京へは行こうと思っていたし、親を説得できる年齢になったら一人暮らしをするつもりだったから、と。
それでも構わないと、四木は了承した。我ながら必死だったと思う。何故そこまで必死になっていたのかも分からない。だが、どうしても自分の近くにおいておきたかった。
そして今それが叶う。




作品名:Götterdämmerung 作家名:はつき