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Götterdämmerung

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帝人が“うん”と頷いてから、四木の動きは速かった。帝人の両親を説得し、池袋での住居を見つけ、帝人が通う学校を探し、周到に環境を整えた。
「お住まいになられるマンションはこちらで用意しました」
「ありがとうございます」
「一応こちらで貴方の名義で口座を作りました。当面の生活費は入金されています」
「はい」
頷いた帝人は、思い出したようにカバンから一つの物を取り出した。
「頼まれていた件、調べておきました。何か足らないことがあったら、また言ってください」
メモリースティックを帝人から渡されると、四木はそれを内ポケットに入れる。
基本的に帝人は粟楠会からの身辺調査や人探しなどは受けている。麻薬や拳銃の密輸に関しては関わるのが嫌そうだが、一般人に被害が及びそうならば四木へ情報を流している。
現在帝人にとっての一番の懸念は、ダラーズが架空の電脳空間を飛び出して、現実に飛び火していっていることだ。まだまだ少数ではあるが、今のうちに矯正しておかないと後でとんでもないことになる。もっともその動きが盛んなのが東京は池袋。カラーギャングという意識が根強いこの地ならば、リアルタイムな状況が肌で感じ取れる。
以前と同じように、高校生になったら地元を出て行こうと思っていたのだが、人生何が起こるか分からない。
だがこれで、後手に回るコトは防げそうだ。
帝人は車内から流れる景色を見ながら、懐かしくも新鮮な池袋での生活に想いを馳せた。



作品名:Götterdämmerung 作家名:はつき