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Götterdämmerung

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都内にある私立中学校に通うことになった帝人は、順調に池袋での生活に慣れていった。中学校での、いわゆるお受験というのも初めての経験だったが、なかなか興味深く受けさせてもらった。おそらく相応の圧力が学校側に掛かっているのだとは思うが、きちんとした結果を出して入学したかった帝人はそれなりに全力を尽くした。
数駅乗り継いだ先にある中学校への電車通学は、結構楽しい。地元での通学は徒歩だったし、来良に入学したときも近所にアパートを借りたので変わらず徒歩だった。
毎朝お弁当を作り、歩いて駅まで行き、電車の中では携帯を弄ったり本を読んだりしていた。
ふと、帝人はある中学校の前まで来ていた。都立の中学校で、男子は以前帝人が着ていた黒い学ランを着ている。
今の帝人の制服は、同じく学ランだが色が紺色だ。あと、金ボタンではなくてホックで留めるようになっており、首元の詰襟の部分に校章が縫い付けられている。
正門のところから、セーラー服を着た少女が二人出てくる。中学校時代の張間美香と園原杏里だった。元気で活発そうな美香と、聡明で大人しそうな杏里は良い感じで対比している。すでに杏里の身には両親の事件が起こった後だ。現在は一人暮らしで、赤林の庇護下にいるはずだ。
今、杏里は解放感と孤独感の両方を抱えている、と帝人は思う。もし自分が杏里と同じ状況だったら、と考えたとき帝人はそう感じた。自身の不安定さ、遣る瀬無さにどうしようもなく、『寄生虫』という表現を彼女はしていたが、誰かに依存することによってそのバランスを取ろうとする。だが、ずっとそれでいられるわけではない。いつか現状は破綻する。
でもまだ、彼女は依存したままで良い。もう少し時間が経って、彼女が大人になっていけば変わっていくだろう。変わらざるをえない。
まだ接触するのは早い。赤林と会うのと、杏里と会うのと、どちらが先だろうか。考えるとおかしくなって、クスリと帝人は笑みを浮かべた。



作品名:Götterdämmerung 作家名:はつき