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恋した相手は、敵になりました

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お互い、相手を見すえたまま、歩きだす。
一歩、二歩……、近づいていく。
けれども、ある程度まで行くと、ふたりともそれ以上はまえに進まず、横へと移動する。
この距離で、うかつに相手のほうに踏みこむのは危険だ。
相手は強い。
ほんの少しの隙であっても相手に見せれば、やられてしまうだろう。
双方ともに警戒しつつ、動く。

あせるな。
あせっちゃ、ダメ。

神楽は自分に言い聞かせる。
眼は沖田をにらみつけたままだ。
その動きを一瞬でも見逃すわけにはいかない。
機が熟するのを、待つ。

やがて。
神楽は長い睫毛に縁取られたまぶたをカッと開く。
緊張しきった空気に、なにかを感じた。
頭の隅で、ひらめいた。
今だ……!
そう思った直後、足は床を蹴っていた。
まえへと跳ぶ。
それは沖田も同じだった。
こちらへと向かってくる。
あっというまに距離は詰まった。
先に仕掛けてきたのは沖田だ。
沖田の刀が鋭く斬りつけてくる。
だが、神楽はそうくることを予想していて、武器である傘で沖田の刀を受け止めると同時に、襲いかかってきた勢いを逆に利用して、力いっぱい押しやる。
沖田が吹き飛ばされることを、あるいは、沖田の手から刀が離れることを、期待した。
しかし、沖田は自分に向けられた力のほとんどをうまくかわしたようで、バランスを崩すことなく身をすっと退いた。
神楽はそれを追うように踏みこみ、武器を繰りだして襲いかかる。
それに沖田は応戦する。