恋した相手は、敵になりました
沖田の攻撃は鋭い。
狡猾だと感じるほど、容赦なく嫌なところを突いてくる。
どうにか攻撃をかわしながら、神楽は胸の中でチッと舌打ちした。
強い。
そんなことは知っていた。
二年まえ、何度も戦ったことがある。
だが、あれは喧嘩だった。
こんな本気の戦いじゃなかった。
強いのはわかっていた、けれど、予想を上回っているのかもしれない。
現に今、自分は沖田の強さに押されている。
だけど。
二年まえ、沖田は真選組内で反乱を起こしてその頂点に立った。
そして、江戸の征服に乗りだした。
その直後、神楽は江戸をあとにした。
地球から離れた。
父とともに宇宙を旅し、いろいろな星で害をなす異星人と戦った。
自分の何倍もの大きさの異星人や、特殊で強い力を持つ異星人とも戦った。
死ぬ、と感じたこともあった。
苦しく厳しい戦いを乗り越えてきた。
二年経って。
身体が成長しただけじゃない。
私は強くなった。
自信がある。
神楽は防戦にまわりがちになっていた自分に喝を入れ、矢継ぎ早に攻撃を仕掛ける。
双方ともに退くことなく、攻撃し合う。
ふと。
「やるねィ」
ぎりぎりで攻撃をかわした沖田が、ひとりごとのように言った。
二年まえの、神聖真選組皇帝になるまえのような、言葉遣いだ。
なつかしさを神楽は感じる。
頬がゆるむ。
だが、すぐに引き締めた。
さらに攻撃する。
それを沖田は刀で受け止めた。
お互い、退かない。
それぞれの武器がぶつかっている状態で、相手を圧倒しようとする。
夜兎族の神楽は地球の者より力が強いはずだ。
怪力、と言われたこともある。
しかし、沖田は退かない。
つい、感心してしまう。
けれども、そんなことは顔には出さない。
互いの武器の向こうにある沖田の顔をにらみつけたままでいる。
沖田も、武器の向こうから、じっとこちらを見ている。
その口が動く。
「好きだ」
え。
聞き間違いかと思う。
沖田の口がまた動いた。
「俺はおまえが好きだ」
作品名:恋した相手は、敵になりました 作家名:hujio