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恋した相手は、敵になりました

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その声が、耳を打った。
その眼差しが、胸に斬りこんでくる。
心臓をわしづかみにされた気がした。
ドクンと大きな鼓動が身体中に響き渡る。
身体が熱い。
頭の中は、真っ白だ。

力が抜けた。
どうしようもない。
沖田が踏みこんでくる。
なのに、反撃どころか防御もできない。
気がつけば、武器である傘は手から離れていた。
そして、床に倒されていた。
天井が見える。
その視界に、沖田の端正な顔が入ってくる。
冷静な眼差しが神楽を見おろしている。
だが、その手にはもう刀はない。
手は両方とも、神楽を押さえつけるために使われている。
武器を手放すなんて。
神楽は思った。
しかし、それは自分に跳ね返ってくる台詞だ。
けれども、沖田があんなことを言ったのは隙をつくるための嘘だったのではないことが、わかる。
あれが嘘なら、沖田は刀を手放さず、そして自分は斬られていただろう。
だいたい、沖田は今、こんな圧倒的に優位な状態で、攻撃してこない。
ただ見おろしているだけだ。
じっと見ているだけだ。
だから、神楽も倒されたままの状態で、ただ沖田の顔を見あげる。

少しして、沖田の口が開かれる。

「この先ずっと、俺と一緒にいてくれねェかィ」