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これもいわゆる運命の出会い?

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確か昨夜は久々に外出許可を取って、日用品と幼馴染に催促された品物と同室の友人へのおみやげなど色々な買い物を堪能してから、帰ろうとした矢先に、何というかべたな奴らに絡まれたのだ。



「よーよー姉ちゃんよー、俺ら金ねぇんだわ。ちょーっと施ししてくんねぇ?」
「まあ姉ちゃんが代わりに遊んでくれるってのもありだけどな」
ぎゃははと柄の悪い声を上げて笑う連中に、さすがの帝人も眉を顰める。
態度だけ威張る彼らより遥かに強い男たちに見慣れているせいかあまり恐怖は感じられないが、街中で騒ぎを起こしでもしたら、卒業を迎えしかも配属まで決まっているのに、下手するとそれら全てが取り消しになるかもしれない。隠蔽は得意だけどめんどい。
さてどうしようか、と手に持った荷物を腕に抱え直し、はあっとため息を吐けば、それをどう解釈したのか「生意気な姉ちゃんだな、これは教育的指導が必要か?」と薄汚い腕を伸ばされる。
反射的に腕を払おうとした帝人は次の瞬間ぐいっと後方に引き寄せられた。
「は?」
帝人の視界が男共から、白いYシャツにシフトチェンジする。
ぱちりと瞬きした帝人の頭上から、「てめぇら、うぜぇことやってんじゃねぇよ」と低く、しかしよく通る声が落ちてきた。
見上げれば、金色の後頭部。どうやら、男共と帝人の間に、この勇ましくも大きな広い背中が割り込んできたようだ。帝人にしてみれば幸いだが、男共にしてみれば面白くないわけで。
「てめぇこそ何ヒーロー気取ってんだよ」
「一人でのこのことさぁ、わざわざぼこられに来たのかよ」


「あ゛あ゛?」


目の前の人間の声がさらに低くなった。威圧感すら伴うそれに、男共が思わず後ずさる。
しかし遅かった。
喧嘩を売る相手を、男共は間違えてしまったのだ。
咥えていたのであろう煙草を落とし、革靴で火を消し潰す。背中越しに「下がってろ」と言われ、帝人は素直に下がった。
帝人が安全圏に移動したのを確認した金髪の男は指の関節をぼきぼきと鳴らし、今更尻込む男共にあっさりと告げた。





「そんな死にてぇなら、今すぐ殺してやるよ」





そして屍が積み上げられた。





というのは、もちろん比喩だ。
実際は例えボロ雑巾になってたとしても男共は生きている。が、意識は無いだろう。
さすがの帝人も同情を隠せずにぼんやりと見ていると、金髪の男が振り向いた。
サングラスを掛けてもわかるほど、端正な顔立ちの青年が胸ポケットから新しい煙草を取り出しながら、帝人の元へと歩みよってくる。
「お前、大丈夫か」
「え、あ、はいっ。おかげさまで、傷一つ無いです。ありがとうございます」
「そうか、ここら辺は治安が悪ィわけじゃねぇんだが、たまにあんな馬鹿な連中が居てな。お前も災難だったな」
「あはは、そうですね。でも、災難じゃなく幸運でした」
「・・・何でだ?」
不思議そうに問いかける青年に、帝人はふわりと笑った。
「貴方に助けていただけましたから。自分は、幸運です」
実際、青年の喧嘩は目を奪うほど鮮やかで圧倒的ですごかった。
一騎当千。
たかが喧嘩にその言葉が不意に浮かぶほど。
サングラスの下の目が見開かれたのに気付かずに、帝人は言葉を紡ぐ。


「まるで、金色の獣が咆哮をあげるようで、すごくかっこよかったです」


絡んできた連中には悪いが、いいものを見たと帝人は内心ほくほくしていた。
すると青年が顔を逸らし、「あー」と呟く。何か変なことを言っただろうかと帝人が首をひねると、青年の視線が再び帝人を映した。
「お前、名前何て言うんだ」
「あ、そうですね、すみません。名乗るのを忘れてました。――僕は竜ヶ峰帝人です」
「・・・ごつい名前だな」
「・・・・よく言われます」
青年は帝人を見つめ、ふと頷く。何だろうと帝人が青年の行動を待っていると、彼は掛けていたサングラスをおもむろに外し、胸ポケットに入れた。晒された顔はやはり整っており、思わず帝人はどきりとした。
「俺は平和島静雄だ」
「・・・・平和島さん、ですか」
「なげぇだろ。静雄でいい。俺も帝人って言うから」
「うぇ・・・・あ、はい、わかりました」
やっぱりどぎまぎする胸に首を捻る帝人に青年――平和島静雄はおもむろに「時間あるか」と聞き、帝人は時計を確認して「ある」と答えた。そうしたら、静雄に「付き合え」と半ば強引にこれは未成年が来るとことじゃねぇだろうという店へと連れて行かれて、進まれるがままに飲んで飲んで・・・・・、





今に至るわけだ。





つまり僕は未成年飲酒して酔った挙句にこの金髪イケメンといわゆるベットインなるものをしてしまったというわけですね。
成程、把握した。
となれば帝人がとる行動は一つである。





「よし、逃げよう」