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二年後設定銀桂短編集

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銀時はこの近辺で生まれたのではない。
生まれ故郷は遠くにある。
血縁の者たちは今もそこに住んでいるはずだ。
けれども、銀時は彼らがどうしているのか知らない。交流はない。連絡を取りたいと思わない。向こうも、そうだろう。
彼らにとって、銀時は鬼か天人の子であり、いてほしくない子供なのだ。
だから、自分は捨てられた。
捨てられて、もどりたいと思わなかった。
行くあてもなく、さまよい、ならず者たちの戦いのあとで物を漁ったりして生き延びた。
松陽と出逢ったのも、血なまぐさい争いのあとの遺体がいくつも転がっていた中だ。
どんな気まぐれか、酔狂か、松陽は銀時を拾ったのだった。
銀時は松陽の家で暮らすようになり、松陽からいろいろと聞かれた。
だが、そのほとんどに銀時は答えなかった。
銀時は自分のことをあまり知らなかった。
生まれ故郷で、教えてくれる者がいなかったからだ。
坂田銀時、という名前でさえ、松陽がつけたものである。
「……そうなのか」
少し間があって、桂は言った。
桂は裕福な藩医の家に生まれて、今は家格の高い武家の養子となっている。
銀時とは境遇がかなり違う。
そんなことは、もちろん以前からわかっていたが、今、あらためて認識した。
なぜか、銀時はイラだつ。
「誕生日なんざ、どーでもいいだろ」
そう吐き捨てた。
それで話を終わらせて、桂の近くから去ろうとする。
しかし。
「どうでもよくはない」
桂の堅い声に引き留められる。
つい、銀時は桂のほうを見た。
真剣な眼差しとぶつかる。
桂は言う。
「おまえが生まれてきたことを祝いたい」
さらに。
「だから、先生は俺におまえの誕生日を聞かれて、今日だと答えたのだろう」
そう続けた。
松陽は銀時が生まれた日がいつなのか知らない。銀時本人が知らないのだから、あたりまえだ。
だが、祝いたい。
そのためには、誕生日が必要になる。
だから、今日だということにした。
そういうことなのだろう。
作品名:二年後設定銀桂短編集 作家名:hujio