二年後設定銀桂短編集
しばらくして。
「なァ」
銀時が話しかけてきた。
「屋台のラーメンでも食ってかねェか?」
提案されて、桂は少し考えた。
そして、答える。
「俺はソバのほうがいい」
「またソバか。てめーはソバばっかりだな」
「武士は質素で素朴なものを食していればいいんだ」
「そのカッコで武士かよ」
「どのような格好であっても、心は武士だ」
「てめーが言うと説得力がねェ」
「なんだと」
「もうほとんどがヅラ子に侵食されてんだろ、身も心も」
「そんなことはない」
言い返し、言い返され、また言い返す。
いつものことだ。
他の者からすればくだらないかもしれない、やりとり。
だが。
仕事で疲れていて、しかも寒い外にいるのに、自分は妙に元気だ。
胸の中が温かい。
「銀時」
呼びかけた。
それから、手のひらを上に向けて銀時のほうに差しだす。
「手」
要求した。
すると、銀時は袖の中にしまっていた手を出した。
手のひらの上に、銀時の手が重ねられる。
その手をつかむと、ふたりの身体のあいだにおろした。
「……俺ァ、犬かよ」
「犬は可愛くていい」
「そーゆー問題か」
「そういう問題だ」
話していて、寒いのに頬はゆるむ。
「銀時」
身を寄せた。
肩がぶつかる。
「ソバは冗談だ。寄り道せずに家に帰ろう」
小声で告げた。
「ああ、そーだな」
銀時が同意した。
そして、つないでいる手を強く握ってきた。
家に帰ったら、甘やかしてやろう。
そう思った。
作品名:二年後設定銀桂短編集 作家名:hujio