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今日も今日とて池袋は平和です

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時間を少しさかのぼり、太郎が甘楽と静香に抱きつかれた頃。
帝人は自分から戦争の二人に近づいていった。帝人が近づいてきたことにいち早く気がついた臨也は持ち前の脚力で一気に帝人の前に躍り出る。

「こんにちわ帝人君!」

そして言うなり急に帝人に抱きついた。帝人はそんな臨也の背中をぽんぽんと数度たたいてやる。
そして同時に思った。ぎゅうっと抱きつかれて臨也の付けている香水の他にいつもなら香らない汗の香りが若干する。それだけ今回の戦争は激しかったのだろう。
臨也は帝人に抱きついたまま、彼の耳の裏や首元に鼻先をくっつけて幸せそうな声を上げた。帝人にあぁ、この人は変態の部類なのだなと思われているとも知らずに。
けれど、そんな臨也の幸せも長く続かなかった。ヒュンと言う音が二人の耳に届く。そして帝人は浮遊感を感じた後に落下していく己に驚いた。

「あっぶないなー!帝人君に当たったらどうする気だったの!?静ちゃんって馬鹿!ここまで馬鹿だったとはね!」

帝人は己を抱き上げて、赤い瞳を怒りで燃え上げている臨也が視界に入った。ふと視線をそらすと静雄が標識を持って青筋を浮かべながら、こちらも怒りのままにほえて言た。

「てめぇが避けなきゃ帝人にあたんなかったんだよ!だから避けるな!とっとと死ね!」

「はぁ?自分のコンロトールの無さを俺の所為にしないでくれる?虫ずが走るっ」

本当に切れているのだろう、あの臨也が皮肉な笑みの面を着けずに怒りをあらわにしている。
静雄も静雄で本当に野生の獣のような覇気を身にまとっていた。帝人は背筋に快感のような電流が流れていくのを感じる。
『非日常』が今正に己の目の前で怒っているのだ。ここはで人は怒りに身を任せる姿など早々見られない。
しかもその怒りの頂点に足しっているのがあの戦争の人間達。帝人は瞳を輝かせて臨也と静雄を見ていた。

「うるせぇ!俺は絶対に帝人だけは傷付けねぇ!んなことより今すぐ帝人を離しやがれ!帝人が汚れるだろうがっ」

静雄はそう言うなり、臨也(臨也が帝人を横抱きにしているため帝人)に向かって持っていた標識を投げつけてきた。
帝人は恐怖で目が見張る。けれど、その標識は臨也と帝人に当たることなく、今まで臨也が立っていた場所に深く突き刺さっただけだった。
とん、と言う音と共に臨也が帝人を抱いたまま何もない平らな道路にちゃくちする。これで本日に止めの浮遊感に帝人は軽く吐き気を覚えた。
普通のジェットコースターよりも恐怖が味わえる、なんてうたい文句にしてこの二人を商品化したらどうだろうなんてあり得ない事まで頭の中を駆けめぐる。
帝人が本当にあり得ないことを考えていた間も、臨也と静雄は口から暴言を吐き、時には静雄が臨也に向かってあり得ないものを投げつけていた。
すなわちそれは全て帝人にも向けられていると言うことで。先ほどの静雄の言葉を疑いたくもなる帝人だ。
対して臨也は帝人を抱きかかえているので、お得意のナイフを出すことができない。
もちろん帝人を置いていけばよいのだが、そこまでして静雄にナイフを投げつけたいわけではない。

「いい加減にしつこいんだよ!静ちゃんはさ!絶対セックスとかもそうでしょ!?はぁ嫌だ嫌だ!これだから童貞っていやなんだよね!」

「うるせぇ!てめぇのほうがその性格なんだからねちっこいに決まってるだろが!」

「俺のは技術ですー!童貞と一緒にすんな!」

臨也の言っていることをまとめると、ようするに臨也はそれだけ経験があると言うことだ。そんなことを堂々と言う人間がいるんだなぁと帝人は感心する。
感心するがまねしたいとは到底思えないが。
静雄も静雄で否定をしなかったと言うことは、きっと臨也の言うとおりなのだろう。きっとそういう関係になった女性は大変だろうなと思う。
まさか自分がその役を(しかも女役)やりたいなどとは思わない。
帝人はもう何度目か分からない浮遊感にそろそろなれてきた頃、視界の端に己の兄とこの戦争二人組の妹たちが仲良く手を繋いで池袋の街の仲へ消えていくのを見た。
あぁ、あちらはもう片が付いたのか、と帝人は苦笑しながら兄たちが消えた方向を見つめる。
そして、兄たちが終わったのならそろそろこちらも終わりにしよう、と帝人は動き出した。
まず、己を横抱きにしている臨也の首元に抱きつく。その瞬間、臨也と帝人からは見えないが静雄の動きが止まった。それはもうぴたっと言う感じに。
そして臨也にしか聞こえないように彼の耳元近くでそっとささやく。すると臨也は帝人を地に下ろし、一度強く帝人を抱きしめると最高の笑顔と「約束だからね!」の言葉を残し去っていった。
帝人は深いため息をはくと、ずっと固まっている戦争の片割れの側まで行く。

「静雄さん」

「っ・・・!帝人っ」

静雄は帝人に声をかけられた瞬間、帝人を思いきり抱きしめる。力の加減はしてあるのだろう。抱きしめられても帝人は痛いとは思わなかった。
しばらくの間、静雄のしたいようにさせてやる。静雄はずっと帝人を抱きしめたまま動かない。

「静雄さん・・・」

「何であんなやつに抱きついたりしたんだよ・・・」

呟かれた静雄の言葉に、帝人は用意していた言葉を紡ぐ。安心させるように静雄の背中を撫でながら。

「ああでもしないと臨也さん、帰ってくれないと思ったからです。だって、僕ももうそろそろ帰りたかったし。お腹空いたし」

ちなみに最後のお腹が空いた、はついさっき思ったことだ。この言葉を言えば静雄がどう動くのかだいたい予想は付く。

「腹、空いたのか?」

静雄は帝人を抱きしめていた腕をほどき、帝人を見つめてくる。帝人は照れ笑いをしながら頬をかいて見せた。

「はい、僕お昼まだなんで」

これは嘘ではない。戦争が始まったのを知らなければそのまま兄と共に家で昼ご飯を食べていた時間帯だった。
戦争に興味津々で自分からその時間をつぶしてしまったのだが。

「そうか・・・なら、飯でも食べに行くか?」

静雄は疑問系にしているが、これで断ってもなんだかんだで連れて行かれるのでお腹も空いているし、ここは素直に頷いておこうと思った。

「はい!喜んで!あ、でも」

「でも?なんだ?」

「あんまり高いところへはいけませんよ?お金あんまり無いから」

「学生に出させるなんてそんな野暮なことさせねぇよ」

静雄は笑うと帝人の頭に手を乗せて優しく撫でた。そんな野暮なことをさせる大人などごまんといる中で、静雄はとても堅実なのだろう。
帝人はそんな静雄の優しさにつけ込んでいるという罪悪感よりも、あの池袋の喧嘩人形と食事に行けるという好奇心が心の中を支配していた。
うきうきと静雄を見上げて微笑む。静雄の頬に赤みが差したが、それには気がつかないふりをした。

「んじゃぁ行くか。・・・ここからだとサイモンのところが近いな。寿司でも良いか?」

「はい!僕、寿司好きですから」

昼から寿司を食べられるなんてなんて贅沢なんだ!と気分は最高潮。静雄はまた笑うと今度は帝人の手を引いて彼にしてはゆっくり目のスピードで歩き出した。
帝人は静雄と手をつなげていることにわくわくとしながら、これから向かう寿司屋に心躍らす。