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逢坂@プロフにお知らせ
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【米英】Give me a chocolate!

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 こうして愛のキューピッド作戦になかば強制的に参加させられることとなったセーシェルは、さっそく、フランスとともにソファから立ち上がった。生徒会室の入口のドアを開けると、さきほどと同じく壁際にはアメリカが立っている。
「アメリカ! そんなとこで拗ねてないで入りな」
「拗ねてなんかないし、俺はここに居たいんだから俺のことは気にしないでくれよ」
 フランスが手招くと彼はさっきと同じように返したが、相手がフランスだからかずっと態度が分かりやすい。口を尖らせるアメリカに、フランスは引き下がらなかった。
「いいから、ちょっと話があんの。イギリス来るまでにはまだ時間あんだろ」
「俺は別にイギリスのことなんか……」
 ぶつぶつ云いながらも、しぶしぶといった様子で頷く。
「話ってなんだい? 手短に頼むよ」
 中に入ったアメリカは、ソファに座ると早々に云った。さっきは自分も焦っていて気づかなかったが、とにかくイギリスのことが気になって仕方ないらしい、そわそわとしている。
 向かいに並んで腰を下ろしたセーシェルとフランスは顔を見合わせ、互いに目配せした。フランスの視線はゴーサインを出している。
「あのっ、その前に一つ確認してもいいですか?」
 手を上げて発言すると、アメリカは興味なさげにセーシェルを見た。
「何だい」
 面倒そうにではあるが、どうぞ、と身振りされたので、セーシェルは意気込んで尋ねる。
「アメリカさんって、会長と付き合ってるんですよね?」
「……」
「セーシェルいきなり直球すぎだから!」
 慌てたのはアメリカよりもフランスだった。彼としてはもう少しぼかしながら行くつもりだったのだろうか。それは悪いことをした。
「あー、ここはお兄さんに任せておきなさい」
「うぃー……」
 敬礼して素直に後ろに下がると、フランスが代わって質問を投げる。
「まぁ、聞いちゃったもんはしょうがないから続けるけど。本当のところどうなの」
「何だよフランス、君まで……」
 アメリカはため息を吐く。それから背もたれに身体を預けると、脚を組み、浮いた片方の脚をぶらぶらとさせながら、さあ、と云った。
 それが答えらしい。誤魔化された、と思ったが、何故か横でフランスはにやにやとしている。
「さあ、か。……なるほどねえ」
「?? どういうことです?」
 さっぱり分からない。今の答えで何がなるほどだと云うのだろう。解説を促すと、彼は口元を緩めたまま云った。
「否定しないってこと。もしくは、否定したくないって心の現れだろ」
「ああ、なるほど! さすがです」
 愛について日々語るだけはあるのかもしれない。感心しかけたが、尋問はまだ続いていた。
「お前も嘘が吐けないね。じゃあ質問を改めるけど、お前ら、どこまでやった?」
 とたんにセーシェルはソファで倒れそうになった。直球なんてものじゃない、剛速球で投げた球がとんでもないコントロールでキャッチャーの頭上を飛び越えて行くシーンが頭の中で浮かぶ。
「き、君らには関係ないだろ」
 これにはさすがのアメリカも口ごもった。頬をわずかに赤くして、自分たち――主にフランスを睨みつけている。
「関係ないが、興味はあんの。なあセーシェル?」
「えっ、はい、そうそう。興味あります!」
 急に振られてセーシェルは慌てながらもフランスに合わせる。そう、興味がないわけではない。ただ、あまり生々しいことは聞きたくないというのも本音ではある。乙女心は複雑なのである。
 しかしとりあえずフランスの体裁は保てたようで、そうと知らないアメリカは顔を赤くしたまま突っ込みを入れた。
「君たちぶっちゃけすぎだぞ!」
「だってお前ら、見ててイライラすんだもん」
 何かが吹っ切れたらしい、フランスはさらりと本心をさらけ出した。理由にならない理由に、当然のごとくアメリカは食い下がる。
「そんなのそっちの勝手じゃないか」
「あー、ウザいから生徒会室出入り禁止にしてって会長に云っちゃおうかなあ……」
「なっ……!」
「うわぁ、副会長の権限振りかざした!」
 天使どころか悪魔のようである。さすが卑怯なことでは会長と肩並べますね、と述べると、フランスはにやりと笑う。
「セーシェル、頭と権限はこうやって使うもんだぞ。――で?」
 再びアメリカを見る。出入り禁止発言は効いたようで、彼は仕方なくボソボソと答えた。
「…………までだよ」
「何だって?」
 フランスが聞こえない、というジェスチャーをすると、やけになったアメリカは「キスまでだよ!」と叫ぶようにして云った。
「へえ、意外と奥手なんだな。もっと若さと勢いで突っ走るかと思ったけど」
「私はちょっと分かる気がします!」
 アメリカが純情青年で助かった。キスくらいならまだ許容範囲だ、と心の内でほっとしながらセーシェルが云う。フランスは振り向いて、首をひねった。
「そう? セーシェルは分かる?」
「なんとなくですけど、分かるような感じがします!」
「はぁ、もう、いい加減にしてくれよ……」
 好き勝手な感想を漏らす二人に、盛大に吐息を漏らすと、アメリカは腰を上げかける。
「答えたからもういいだろう?」
「まぁ待てって。それは、お前から?」
 席を立ち上がろうとする彼をまぁまぁと宥めながらフランスが重ねて聞く。アメリカは頷いた。
「そうだよ。でも、ちゃんとイギリスだって受け入れてくれたんだぞ。なのに……」
「まだチョコをくれないって?」
「!」
 話の途中で急に声のトーンを落としたアメリカは、割り込んだ声にぎょっとした表情でフランスを見つめた。その顔にはでかでかと書いてあるようなものだ――図星、と。フランスはそれを正確に読み取った。
「やっぱりか」
「フランスさんの予想、当たりましたね」
 アメリカはそれで逃げる気をなくしたようで、ソファに深く座りなおす。そして背もたれに片肘を置くと、ふてくされたように身体ごとそっぽを向いた。
「そんなに欲しいなら、正直に欲しいって云やあいいのに。どうせ云ってないんだろ?」
「……嫌だよ」
「何を意地になってんのかねえ。イギリスは禁止令のことがあるから渡しづらいのもあるんじゃないの」
「分かってるよ……」
 そう答えてから、彼は続ける。
「……だけど、イギリスが俺のこと好きなのは確かなんだから、彼は俺にくれるべきなんだ」
「うわぁ凄い自信ですね……」
 こうなるともう素直に感心である。一方のフランスはやれやれといった様子だ。
「まぁ、お前の云うことも一理あるけどな。確かに、イギリスのお前に対する愛情は異常なくらいだよ」
「だろう?」
「けどアレがお前のことそういう目で見てるかまでは分かんないぞ?」
「……っ」
 とたんにアメリカは顔をこわばらせた。
「いくら好きだって云ってもなぁ、家族愛と恋愛は違うからなぁ。キスだってお前が迫ったならあいつなら許容しかねないだろ」
 フランスの指摘に衝撃を隠せなかったらしい、うつむいた彼はみるみるうちに気落ちした様子になる。
「そんなこと……君に云われなくても分かってるよ」
「あぁ、それは分かってんのね」
「ちょ、ちょっとフランスさん、キューピッド作戦はどうしたんですか!」