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【米英】Give me a chocolate!

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 気づいたアメリカは戻ってきて取り返そうとするが、フランスは手で制す。
「まぁまぁ、固いこと云うなって。……ああ、本当だ。いっこもないの? 何か意外なんだけど」
 横からセーシェルが覗いてみると、確かにその中にはチョコらしきものはない。はて、彼を想う三人とも今年はあげなかったのだろうか、と思いかけるが、そんなわけはない。案の定、アメリカはこともなげに云った。
「全部断ったからね」
「断っちゃったの? そりゃまた何で」
「何でって……好きでもないのに受け取れないよ」
 もったいないことを、と云わんばかりに目を丸くさせていたフランスは、アメリカの答えに今度はその目を細めた。
「……へえ……」
「何だい……」
 お世辞にもさわやかとは云えない、いや、云ってしまえば気持ちの悪い笑みを浮かべている相手に、アメリカが若干怯む。フランスは軽い調子でからかった。
「お前も一途だねえ。やっぱあいつに育てられただけあるな」
「それとこれと何の関係が……」
「関係あるって。――よし、これはこのままこのへんに置いとこう」
 ファスナーを開けたままのそれをソファに無造作に置くと、フランスは満足そうに云った。
「準備完了だ。……健闘を祈る」
「巧く行くといいですね!」
「ああ――」
 アメリカがそう云って二人に頷きかけた、……まさにそのときだった。
「――駄目だ!」
「!?」
 実にタイミング良く――悪くと云うべきか――どこからか聞こえて来た声に、三人は硬直して互いの顔を見合わせた。それは一言だけだったが、聞き覚えのありすぎる声だ。
「今の声、眉毛……ですよねえ」
「だよな」
「うん、イギリスだ」
 それぞれの意見が合致したことに安堵するが、事態はちっとも安心出来ない。耳を澄ますと、イギリスと思われる声の主は、どうやらドアの外、つまり廊下で誰かと話しているようだ。
「駄目だ、ぜってえ駄目だ」
「そう云わないでよ、せっかくドイツにあげようと思って持って来たんだよ~」
「イタリアだな……」
 フランスの言葉に、セーシェルとアメリカが頷く。会話の内容から察するに、イタリアがドイツへのチョコを取られそうになっているようだ。それをなんとか阻止しようと生徒会室まで着いてきたイタリア、突っぱねるイギリス、という図式らしい。
「駄目なもんは駄目だ。バレンタイン禁止令出てたの知ってんだろ? 無視して持って来んのが悪い」
「だってえー」
「だってもくそもねえ。これは没収だ」
 容赦のない一言に、イタリアの悲痛な叫びが響く。
「嫌だよ~! 俺の愛、没収しないでえ!」
「……」
「あ、ちょっと考えてる」
 ぼそりとフランスが呟いた。それが耳に入ったかのように、はっと我に返ったイギリスがごほんと咳払いした。
「と、とにかくこれはだな……」
 しかし云い掛けたとき、今度は更に遠くのほうから、低く男らしい声が掛けられた。
「イタリア! 馬鹿なことやってないで帰るぞ!」
 噂のドイツである。さしずめこの騒動を知って、飛んできたというところか。しかし彼はイタリアではなくイギリスの味方のようで、イタリアは不服そうに彼に漏らす。
「だって、ドイツう」
「だってじゃない、イギリスの云うとおり、お前が規則に背いたのが悪い。しかしこういう事態を招いた俺にも責任の一端はある。イギリス、イタリアが迷惑かけて済まないな」
「ああ、いや……」
 謝罪したドイツは逆に戸惑っているイギリスを置いて、次にイタリアに向かって云った。
「お前のチョコレート、食えないのは残念だが致し方ないだろう。その代わりと云ってはなんだが、その……俺の家に来ないか? お前が良いなら、俺からプレゼントしようと思う」
「えードイツから貰えるの? 行く行く! じゃあねえイギリス、それはイギリスにあげるよ!」
 驚くべき立ち直りの早さである。何故か丸く収まっている二人を前に、呆気にとられているイギリスが目に浮かぶようだ。だがチョコを押し付けられると、彼は困惑した声でイタリアを引き止めた。
「え、ちょ、お、おいイタリア待て! 俺がお前の愛を受け取るわけには……!」
「えっ、いいの?」
 チョコが返されたらしい、イタリアは明るい声で尋ねた。
「……と、特例だからな! お前らがあまりに哀れだから、仕方なくだからな! 他のやつらには内緒だぞ」
「イギリス……悪いな」
「ありがと! イギリスもハッピーバレンタイン!」
 二人はイギリスに礼を述べると、騒々しく廊下から去って行った。
「わぁお、何か知んないけど独伊のやつらがハッピーエンドって感じ?」
「会長もそこまで鬼にはなれなかったってことですねえ」
「イギリスのやつ……」
 と、三人が口々に感想を述べた瞬間。
「……くそっ!」
 イギリスが拳で殴りつけたらしい、ドアがドン、と鈍い音を立てた。
「あぁ、荒れてんなぁ……まぁあんな寸劇見させられたら気持ちは分かるわな」
「もう規則とかどーでもいい気分になりますよね……って、こっち来ますよ!」
「やべっ、隠れろ!」
 フランスが声にならない声で悲鳴をあげた。どうにもコメディドラマのような三人組である。
 そして数秒後、生徒会室に久方ぶりの静寂が戻ったのを狙い済ましたかのように、ゆっくりとドアが開いた。