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マルナ・シアス
マルナ・シアス
novelistID. 17019
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【東方】東方遊神記1

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(諏訪子様、諏訪子様)
ニヤニヤしながら二人のやりとりを見ていると、早苗が諏訪子の隣に座って小声で話しかけてきた。
(んっ?どうしたの?)
(やっぱり、この子・・・いえいえ、この方可愛らしいですね)
(そうだねぇ。きっと純真な心を持ってるんだよ)
(諏訪子様、声が笑ってます)
(早苗こそ)
青蛙神も、扱い易そうという意味では神奈子と似た者同士だなと諏訪子は思った。
「これはご丁寧にありがとう。そんなに畏まらなくっていいんだよ」
幻想郷に移って以来、初めて神奈子に会った人物で諏訪子達に聞く前に彼女の本質を見抜けた者は、今のところ一人もいない。 大した千両役者っぷりである。しかしそんな彼女の見栄も、すぐに諏訪子、そして時には早苗にもぶち壊しにされてしまうのが通例なのである。勿論早苗には悪気は一切無いが。それでも懲りずに続ける神奈子も大概である(笑)。「そうだよ青ちゃん、神奈子のそれはただ格好つけてるだけで、いつもはもっとだらしないんだよ。よく早苗にも甘えてるし」
そして今回も例外ではなかった。ここ数年の間事あるごとに繰り返している。もしかしたらこれは仲の良い家族のコミュニケーションのようなものなのかもしれない。
「そうです。こう見えて神奈子様ってとっても可愛らしい方なんですよ❤」
今回は早苗も参戦するようだ(笑)。繰り返すが勿論純真さ故(ゆえ)である。
「ちょっ!!二人とも毎回毎回・・・」
「・・・はっはっは。諏訪子殿も冗談がきつい。こんな強大な力の持ち主で、神々しい光を放っている御方が・・・そんなわけないでしょう?」
今の間は多少なりとも疑っている証拠だ(笑)。しかし確かに先ほどまで神奈子が出していたオーラはかなりのものだった。れっきとした神にとても大きな憧れを抱いているらしい青蛙神としては、さきほどの神奈子こそ理想の存在である。信じたいのだろう。
「信じられないかぁ~。じゃあ仕方ない。いい機会だし、早苗も知らないような超昔の超恥ずかしエピソードを・・・」
諏訪子はとても楽しんでいるように見える。
「ちょっ諏訪子!!ダメダメダメ!!そんな話しないでってば!!ねぇ!!」
まさかの緊急事態に泡を食った神奈子は諏訪子の口を塞ごうと飛びかかった→それを諏訪子は難なくヒラリとかわす→必然的に神奈子は顔面から床へ突っ込む。見事な流れだった(笑)。
「ね?この程度なんだよ、こいつは」
諏訪子はうつぶせに突っ伏している神奈子の頭をポンポンと叩きながら青蛙神に笑いかけた。
「・・・・・・」
絶句状態である。相当ショックも大きいだろう。
「でもね、青ちゃん」
それまで笑っていた諏訪子が、子供に諭すような、とても優しい顔で語り始めた。
「ここ幻想郷ではね、そういった固定観念に囚われなくていいんだよ。ここでは人間から始まって、妖怪、幽霊、悪魔、そして僕たち神様だって、普通に暮らしている。まぁなにをもって普通なのかは僕にも解らないけど、少なくとも僕たちが顕界にいた時みたいに、民草に畏怖、崇敬されるために肩肘を張る必要はない。それに、対等とまでは言わないけれど、他の全ての存在とお話ししたり、宴会を開いたりって直接触れ合うことができるんだ。だから、僕も神奈子と馬鹿をやれるし、神奈子もこんなに可愛くなれたんだよ。・・・幻想郷に来る前までは、今の僕たちの状況なんて、想像もできなかった。だからね。青ちゃんも、どういった経緯で幻想郷に来たかは解らないけれど、来たからには、自分の好きなように振る舞っていいんだ。幻想郷はきっと青ちゃんの全てを受け入れてくれるよ」
一通り喋り終わると、諏訪子は静かに目を閉じた。顕界での日々、幻想郷での今までを思い返しているのだろうか。因みに神奈子の頭を叩くのは継続中。
「諏訪子殿・・・」
「諏訪子様・・・」
それは青蛙神にとってはもちろん、早苗にとっても衝撃は少なくなかった。物心ついた時からずっと一緒にいる諏訪子の気持は、大抵理解しているつもりだった。しかし、ずっと一緒といってもせいぜい二十年程度。諏訪子が神として過ごしてきた数千年の時を
 思えば、自分が一緒に過ごした時間など、星の瞬きのようなもの。そんな自分が諏訪子のどれほどのことを理解できていたのだろう。なにか生々しい現実を叩きつけられたようで、早苗はとても悲しい気持ちになった。
「それは違うよ~早苗~」
神奈子の頭を叩くのをやめた諏訪子が今度は早苗に満面の笑顔を向けて言った。
「・・・え。」
「そんな悲しそうな顔しちゃって、大方、自分はちっぽけな存在だーみたいなことを考えちゃったんでしょ?悪いけど、早苗と巡り合えてからの二十年は僕にとっても、神奈子にとっても、神として存在し続けた中で、一番楽しくて、幸せな時間だったよ。そしてそれは、これからもっと続くんだ」
「諏訪子様・・・っ」
もともと泣きそうだった早苗は遂に泣き出してしまった。けどこの涙は、先ほどまでとは180度逆の意味の涙だ。
「あ~あ~もう、泣いちゃダメだよ、ほら、もうお昼ご飯食べよう?僕もうおなか減りすぎて背中とくっつきそうだよ。神奈子もいつまでも寝てないで、早苗のご飯が待ってるよ。青ちゃんも、早苗のご飯はとっても美味しいんだよ~」
「あっ、ごめんなさい、すぐ用意しますっ」
涙を拭った早苗は最高の笑みをうかべてから台所へ駆けて行った。
「さあ、皆も行こう」
そういって諏訪子もトテトテと歩いて行った。
「・・・やれやれ・・・これだから、いつまでたってもあたしはあの娘にはかなわないって思っちゃうのよねぇ・・・結局完全勝利したのはあの時の一回きりだし」
あの時の一回というのは、顕界で二人が初めて会った時のことだ。顕界の歴史としても有名なんじゃないかい?諏訪大戦。まぁ当時神奈子は勝ったけど、あまり良い思いはできなかったみたいだね。さて、話を戻すよ。
やれやれといった感じに起き上がった神奈子はその場で胡坐(あぐら)をかき、炬燵に頬杖をつきながら大きくため息をついた。しかしその表情はどことなく嬉しそうだった。「諏訪子殿は・・・やはりこの神社の第一神なんですね」
「そうねぇ・・・あの子はよく他の奴に神奈子は自分よりも強いって言ってるみたいだけど、あの子の方が、よっぽど強いっていうのよまったく。それより・・・ごめんなさいね、あなたの夢を壊しちゃって。幻滅したでしょ?」
「そんなことはありません。先ほど拝見した御力は偽りないものですし、諏訪子殿も仰ってましたが、あなたがそうなったのは、むしろ喜ばしいことじゃないですか?」
青蛙神は可愛い顔をニッコリとさせながら言った。今までのやりとりで、この神社の三人の人となりは大体理解できたのだろう。気付いていないようだが、実は早苗はまだちゃんとした自己紹介はしていないんだが。ともかく、彼女にとって三人の印象はとても好ましいものになった。
「ははっ、どうだろうねぇ」
神奈子は少し照れた様に笑った。本人も今の自分について少なからず悪くはないと思っているようだ。そりゃあ多少は思うところはあるだろうが。