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四日間の奇蹟

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「うん。俺がまだ小学生のときだけど、大好きだった俺のじいちゃんが死んじゃって、俺すっげぇ泣いた時があってさ。最初のうちは景ちゃんも亮ちゃんも心配して慰めてくれたり抱きしめてくれたりしたんだけど、俺泣き止まなくて。そん時、景ちゃん俺の目を見ていったんだ」
「なんて?」
「涙は自分の為に流すんだぞ。自分が可哀想だって。お前はもう十分自分の為に泣いたんだから、今度はじいちゃんの為に、じいちゃんが天国で心配しないように、笑っていろ――ってさ。景ちゃんらしいでしょ」
「そやなぁ…」
「俺、そん時思ったんだ。だから景ちゃんは泣かないのかなって。俺景ちゃんが泣いたとこ見たことなかったから」
そう言って、ジローは空を仰いだ。青空にかかる太陽は、わずかに西に傾き始めている。
「でもね、俺。景ちゃんの事、強くてすごいなって思うけど。その分とっても心配」
「うん」
「泣いたら楽になれるって、俺は知ってるから。泣くことは、自分の想いを吐き出すことだって。悲しいって思ったことや、苦しいって思ったことを、ずっと心に溜めてるなら、景ちゃんはいつからそうだったんだろう…」
それは、自分も跡部に対して感じたことだったから、ジローの言いたい事は痛いほどわかった。
俺は、ジローのふわふわ頭に手を置く。
「景ちゃんも亮ちゃんも、元気で戻ってくるといいな」
「そやなぁ…」
ジローのつぶやき声は、俺の胸の中に篭ってから、屋上を吹く風に乗って飛んでいった。
届けばいいと思った。この想いが、今どこかにあるあの二人の心に、届けばいい。


作品名:四日間の奇蹟 作家名:310号