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四日間の奇蹟

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青い空に、もう一つ太陽が出来たかのように見えた。接触した二機の機体に太陽光が反射して見えたのだ。しかしそれも一瞬の事で、白い煙を吹き出しながら一直線に落ちてくる機体を、俺はぼんやりと目で追っていた。まるでおもちゃの様だと、場違いな事を思いながら。
現実感がなかったのだ。
突然眼前で起こった出来事を、映画の場面を見るような気持ちで見ていた。目の端で、あの旗が揺れていたのを覚えている。まるでスローモーションの映像を見ているかのように、それはゆっくりと流れていった。実際は一瞬だったのだろう。
次の瞬間、眩しい閃光は俺の目を射し、空を切るような爆音は耳を劈いた。そして、もの凄い爆風が一瞬で俺の所まで押し寄せ、俺は地面に倒れたのだった。








救急車の音が聞こえた。嫌な予感が胸をよぎる。仲間の誰かが怪我をしているかもしれない。俺は救急車の音が聞こえた方向に走りだした。人混みで上手く前に進めないのにいらだちを覚える。
やっと救急車の所までたどり着くと、そこには怪我人で一杯だった。しかし、直接爆発に巻き込まれた人は少ないようで、そのほとんどが爆風で倒された時に怪我をした人たちのようだ。
辺りを見回して、みんなを探した。すると、遠くの方で、見慣れた長身を見つけた。
「樺地!どないしたん、大丈夫やったか?」
樺地は俺に気づくと、不安げな顔をして、
「跡部さんと、宍戸先輩が……」
と言った。すっと背筋が冷えるような感覚を覚える。嫌な予感が当たったか。
樺地の見つめる一点を見ると、救急車の前に担架が二つと、そしてその周りには岳人とジローがいた。
「岳人!ジロー!」
岳人とジローが、今にも泣きそうな顔で振り向いた。
「侑ちゃん!」
「侑士!」
見ると、担架の上にはやはり跡部と宍戸がいて、二人とも意識が無いようだった。
「跡部と宍戸は?大丈夫なんか?」
「わかんないけど、でも景ちゃんは頭を怪我してるみたいなんだ」
ジローが跡部の額に手を当てながら言う。


頭――――。


俺は、その事に衝撃を受けたが、なるべく二人を動揺させないように、呼吸を落ち着かせて、跡部と宍戸の容態を確かめた。
二人とも息はしている。
跡部は、体中が傷だらけだ。破片の直撃を受けたのだろうか。一番気になるのは、やはり頭部の裂傷だった。頭はデリケートな部分だ。打ち所が悪いと、それが原因で脳が相当なダメージを受けることになる。跡部の頭は、包帯が巻かれ、簡単な応急処置が施されていたので、怪我の度合いを測ることが出来なかったが、その包帯にも血が滲んでいた。
一方宍戸の方は、肘や膝にすりむいたような傷を負っているが、怪我の程度はそれほど重くないようだった。しかし、跡部のように頭を強く打っている可能性があるので安心はできない。
「侑ちゃん……、景ちゃんとりょーちゃん大丈夫?助かるよね?」
ジローがすがるような瞳で見つめてくる。
「俺にもわからん。病院で見てもらわんことには」
ジローはぎゅっと唇を引き結んで、再び跡部と宍戸の担架に向き直った。岳人が、ジローの手をぎゅっと握る。
「君たち、その子達の友達?」
見ると、救急隊員の制服を着た3人の男が走ってきた。跡部と宍戸の担架を救急車の中に運び込こんでいる。
「病院側の受け入れ準備ができたから、今からこの子達を連れて行くけど、誰か二人一緒に救急車に乗ってくれないか」
救急隊員は、忙しそうに手を動かしながら早口に言った。
「岳人、ジロー、一緒に乗っていき」
「侑士は?」
「俺と樺地は、鳳と日吉を捜して後から一緒に行くから」
岳人は一瞬不安そうな瞳を向けたが、大きく頷くと、
「お前らも早くこいよ」
と言った。
そして四人を乗せた救急車は、忙しないサイレンを響かせながらその真っ直ぐな港の道を走り去っていったのだった。
俺と樺地は、その赤いランプが見えなくなるまで、祈るような気持ちで見送った。
いつもと違う喧噪とした港を、湿った海風がさぁっと吹き抜け、そして空だけは相変わらず青かった。




作品名:四日間の奇蹟 作家名:310号