"忘却は罪"と忘れること勿れ
「教えて下さいっ…どうして雲雀さんはっ…!ン、――っは、ぁ…」
「…君は知らなくていい」
無理やり口を塞ぎ、言葉を塞いだ
突き放す、言い方
我ながら滑稽だと笑えてくる芝居
それでも僕は演じなきゃいけないんだ
…君との約束の為に
「君は思い出し始めたのだろう?昔の記憶、自分の記憶…」
半年前、記憶を失う事になったあのことを、今の彼は知らない
…知ってはいけない
「なら、君は戻るんだ。自分の居た場所に…僕から離れるんだ」
「そ、んな…」
「これ以上、君はここにいてはいけない」
実際問題、赤ん坊にバレた今、ボンゴレ10世の行方が他の敵対組織にも掴まれたと言って良い
奴らはこぞって今がチャンスだとして牙を剥くだろう
そうなったら計画全てが台無しだ
既に半年前に立てた計画の半分は崩壊しきっているというのに、これ以上の崩壊は命取り
…限界だ
「君がいて僕がいるこの世界は、偽物だった」
…僕にはもう、君は届かない
「早く自分の元いる場所に帰りな」
…それでも、約束は守れたでしょう?
「ここはもう、君のいていい場所じゃない」
「嘘、だ…うそだっ」
"沢田綱吉"―
作品名:"忘却は罪"と忘れること勿れ 作家名:雪兎