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"忘却は罪"と忘れること勿れ

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「半年振りだな、雲雀」
「…赤ん坊」
軋む音
幸福が、崩れ落ちていく音
耳鳴りが鳴り始める
―気持ちが、悪い
「何、しにきたの」
聞かなくとも分かっている
彼は―
「ダメツナを…引き取りにきた」
終わりを告げにやってきたのだ

「あ!ひばりさ…ん…?」
僕達の姿を視界に捉えた彼の表情に、困惑が浮き出る
僕はちらり、赤ん坊を見た
『ツナに会わせろ』
ボンゴレに連れ帰るかはその後だ
鋭い、殺意の籠もった視線
僕に…拒否権など最初からない
ここにいるのは僕の望みであり、彼の望みではないからだ
だから、赤ん坊がこう切り出すのは当然のことだと予測していた
覚悟していた
なのに、
『…分かった』
そう答えた声が―彼が赤ん坊に会って、記憶を取り戻してしまうのではないかという―恐怖で震えてしまった
「え…っと、どちら様です、か…?」
不安を称えた瞳
垂れ下がった眉
傍へ行けば、彼の指が僕の服の袖にきゅ、と絡みついた
(…当たり前の反応だ)
約半年間、ここを訪れたのは病院の関係者、草壁や六道骸…そして僕、の本当に一握りの者だけ
初めて見る人物に、さすがの彼も対応に困ったようだった
「彼は僕の知り合いでね、」
なるべく当たり障りのない紹介をする
その間も、彼は僕の袖を掴んでいた
微かな震え
その様子には赤ん坊も気付いたようで、珍しく口元に苦笑いを浮かべていた
いつも傍で支え続けてきた教え子
外見は変わらないのに、中身はまるで別人のようで
初対面でも人懐っこい笑みを浮かべていた彼の姿は今、何処にもない
怯えるように瞳を伏せる
(彼を変えたのは…僕だ)
悲しい、独占欲が先走った成れ果て…
つきん、胸の奥に痛みが走った
「はじめまして、ツナ」
「ぁ…は、はじめまして」
ぎこちなく会釈する彼だったが、警戒が少し解けたのだろう…身体の震えはなくなっていた
「ひばりさんのお友達なんですか?」
何も知らない彼の無邪気な質問に、僕も赤ん坊も少し困ったような笑みを浮かべる
「友達っつうか…元仕事仲間みたいなもんだ」
「仕事仲間…」
彼はふぅん、と自分なりに納得したようでそれ以上は突っ込んで聞こうとはしなかった
その事に、僕は小さな安堵の溜め息を零した