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【DRRR】 emperorⅢ 【パラレル】完!!

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「え?ちょっと、大丈夫かい!?」
「……黙って、ろ!」

ただじっと耳を澄ませていただけのはずの臨也が、ふいにグラリと体を揺らした。
立て直しかけて上手くいかずに、力なくそのまま膝をつく。
同じようにぐらついた静雄も、まだかろうじて立っていると言わざるを得ない状況だった。その表情は激痛を耐えるようでありながら、まだ耳は声のする方向を探している。

「………どうしてこんなに……」

重いの。
そう唇は動くのに、臨也の喉からは呼吸が出てこない。
他の3人には聞こえない音の感情が、それほど離れた位置からかすかに聞こえるだけであるはずなのに、心の奥を引き裂いて、重く圧し掛かって、体内から冷たく凍らせて、心臓を潰していく。
かつて、臨也は自分で言った。

(「使用方法によっては、容易に人を殺すことも、世界を征服することさえ出来る、史上最強の武器だ」)

それがまさか、本当にそうなるとは思っていなかったのだ。
だって、アレは帝人くんだから。
無垢で、純粋で、綺麗事が好きな子供で、人を傷つけることも傷つけることも怖くて嫌いで、優しさと同情とちっぽけな自尊心に満ちている。
それが、こんなことをするとはこれっぽっちも思わなかったのだ。そして、本当に人を殺すことが出来るような力が実際に外部に排出されるなんて、予測すら必要ないと考えていた。
喉の置くから出ない声を振り絞るが、やはり息がわずかにもれるだけ。

君はどうしてそんなに、泣いているの?

押し潰されそうな感覚に呼吸が苦しく、必死に目だけを上げてその姿を探す。
わかる、というより伝えられている。
感情の乗った音。きっと自分よりも耳のいい静雄はもっとよく感じ取っているのだろう。それでまだ立っていられるのだから、化け物というか、鈍感というか。

だってこの声に乗せられているのは
『憎しみ』『恨み』『嫌悪』『絶望』『拒絶』『痛み』『苦しみ』『怒り』
そしてとても強い
『殺意』

でもきっと、この声は泣いているのだ。



「……っ、違う違う違う、やめろ!!やめろ!!」

静雄が大声で叫んで、勢いよく空を見上げる。
見上げた先で、焦点が合う。
どんよりとした暗く黒くなり始めた空に、小さな白い点がふわりと浮かんだ。
新羅が、それの白い物体が人の形をしていることに気付く頃には、すでに静雄とセルティが走りだしたいた。その勢いに、静雄の足元でアスファルトが捲りあがる。

その光景と、急激に近づいた歌声に、臨也は震える足で立ち上がると同時に思う。

違う違う違う。
そう言った静雄の言葉の意味が分かった。

『殺意』は誰かへの殺意じゃない。
『殺意』は自分への『希死念慮』。

自分が見つけた天使が、先に天国に帰ってしまう。
喪ってしまう、永遠に。
次第に近づいてくるその白い点を、絶望に包まれて見つめているしか出来なかった。
こんなにも自分が無力だと思ったことは、なかった。