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ICO 鬼の子の詩

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ひょうびょうびょうと風が吹く
回れ風車よ とこしえに
風をはらんで僕達を
大空高くに連れて行け
僕らの希望を乗せていけ

 夷子と夜乙女は風が吹く風車の前を通り過ぎ、長い城壁の上を歌いながら歩いていきます。夜乙女はピアノを弾き、夷子が歌います。
 
 二十ニ いったいなんのため?
  
天空に聳える古いお城
光の粒が降り注いでる
だれもいないよ だあれもいない
ここにいた人いまはどこ?

天空に聳える古いお城
小さな鳥が鳴いてるよ
ここに暮らした人達は
本当に幸せだったんだろか

天空に聳える古いお城
風に青草揺れてるよ
誰が一体なんのため?
答えてくれる人はいない

 石の城壁の向こうに闘技場が見えてきます。
 
 二十三 剣歌

 技場で夷子は古い剣を見つけます。夷子は持っていた樫の杖を捨てて緑青のわいた青銅の剣を手に取ります。
 
蒼いナイフ 刃こぼれしてる
けれど君が
君がそばにいてくれるなら
笑って見ててくれるなら
僕は錆びたナイフでも
荒れた野原を切り拓く
きっと明日を切り拓く

蒼いナイフ ひびが入ってる
けれど君が
君が支えてくれるなら
笑って見ててくれるなら
僕は折れたナイフでも
悪い獣を追い払う
過と不を恐れない
勇 はやりたつ夷子に夜乙女が静かにピアノを弾いて応えます。

 二十四 夜乙女の子守唄
 
 歩きつかれた夷子は古いソファに座って眠ります。オルゴールが鳴り始めます。
 
 二十四A ソファにもたれて
 
 目覚めた夷子は夜乙女の手を引いて甲虫が教えてくれた歪んだ鏡に向かいます。夷子の遠い祖先達は太陽の光を力に変えて城の動力としていましたが、今では鏡は光を嫌う影の女王によって機能を停止させられています。夷子は歪んだ鏡を動かして城の動力を作動させて閉ざされた門を開けようと試みます。
 
 二十五 押せ押せ鏡
 
 夷子は捻れて止まっている鏡を押して元の位置に戻そうとします。
 
押せ 押せ 鏡
鏡を押して
光 光 光を集めろ
集めた光は
七色の虹
キラキラ光って
お城を照らす

押せ 押せ 鏡
鏡を押して
朝日 朝日 朝日を集めろ
集めた朝日は
金色の波
きらきら瞬き
お城を照らす

 夜乙女が夷子の歌に合わせて床を踵で踏んでリズムを取ります。

押せ 押せ 鏡
鏡を押して
開けろ 開けろ 扉を開けろ
扉を開いて
眺める外は
眩く輝く
無限の未来

 夷子の努力によって扉は開かれます。夷子は夜乙女の手を引いて城の橋を渡って外に出て行こうとします。そこに激怒した女王が再び襲い掛かってきます。
 
 二十五 愚昧の輩にただ死を

 チェロを鳴らして女王は憤怒の歌を歌います。
 
世界は滅びの縁にあり
緩やかに だが確実に
静寂は世界を蝕み
誰もが力を望んでいる
迫る樹海を焼き払い
崩れた石組み建て直し
病を焼き薙ぐ焔焚く
力がこの手になかりせば
人はいずれは闇の内

世界は滅びの縁にあり
密やかに だが絶対に
わが娘白き乙女
誰もがそなたを望んでいる
圧し寄る破滅を払いのけ
海の彼方に版図を広げ
世界を再び一つとする
乙女よそなたがあらざれば
世界はいずれ闇の内

世界は滅びの縁にあり
緩やかに だが確実に
愚かで醜い鬼の子め
分を弁えぬ小僧っ子
蝿のごとくに飛び回り
ネズミのごとく掠め取る
ひっきょう穢れたこそ泥め!
ここが汝の死に所
死んで自分の非を悔やめ!

 女王の憤りに橋が崩れ夷子は深い谷底へと転落します。夜乙女のピアノが澄んだ高い音を奏でます。
 
 二十六 雨中ヲ駆ケル
 
 冷たい雨が降る中、谷に転落した夷子は吊り牢の上で意識を取り戻します。逃れるために走り回った夷子は今度は夜乙女を助けるために走り出します。夷子は飛び跳ね踊り、歌います。
 
凸凸徒徒徒!凸徒徒徒!
鼠のように 凸徒徒徒!
谷を踏み越え 凸徒徒徒!
走るよ走る 風を切り
飛んで 転んで 駆け上がる
徒徒徒徒凸凸!凸徒徒徒!

吉凶吉利利!吉霧利!
ましらのように 吉霧利!
鎖を昇るよ 吉霧利!
耳に残るよ あの子の声が
悲しい顔した あの子の声が
吉凶吉利利!吉霧利!

凸凸徒徒徒!凸徒徒徒!
鼠のように 凸徒徒徒!
闇を裂くよに 凸徒徒徒!
せめて も一度会いたや あの子
会って笑顔を拝みたい
徒徒徒徒凸凸!凸徒徒徒!

 城の基礎の部分を駆け上がり、配管をつたい、トロッコを押し、夷子は自分が閉じ込められていた棺桶の部屋まで戻ってきます。そして、ここで儀式のために凍りついた夜乙女とそのまわりに屯する黒い影を見出します。
 
 二十七 亡霊の歌
 
 夜乙女のまわりを取り囲む亡霊達は夷子と同じ生贄にされ、血肉をすり潰されて息絶えていった子供達のものです。子供達は夜乙女の周りを踊りながら呪いの歌を歌います
 
この世は寒く 息さえ凍る
何も聞こえず 何も見えず
ただ胸のうちの憎しみが
我と我が身を焼き苛む
焼ける痛みに胸に手当てれば
凍えた心に血が震える

いったい いかなる罪咎が
我と我が身にあったるや?
肉轢き骨折る苦しみを
味わい 死に行く業罰を
十と三つの幼子が
受けるいわれやどこにある?

この娘を見よ 白の巫女
女王の息を芯として
我らの血肉を貼り付けた
げにおぞむべき怪物よ
おのれ呪わし 白の巫女
我と我が身を返さぬか!

 子供の亡霊達は呪詛の声を上げますが、女王の力によって護られた夜乙女には指を触れることが出来ません。怒った夷子は亡霊となった兄姉達を刀を振るって追い払います。
 
 二十八 その人に触れるな
 
その人に気安く触れるな!
その人は心の澄んだ人だよ
優しい人 僕の大事な人
だから汚い指で指差すな!
ひどい言葉で侮るな!
そんなことをする悪者を
僕は絶対許さない!

その人に気安く触れるな!
その人は綺麗な心の人だよ
素敵な人 僕の一番の友達
だから愚劣な踊りを踊るな!
おかしな声で嘲るな!
そんなことする悪者は
僕の刀の錆びになれ!

 夷子は躊躇いなく亡霊たちを刀で斬り付け、消し去っていきます。やがて亡霊は霧散しますが、夜乙女は凍りついたまま死んだように動きません。夷子は錆びた剣を握ったまま城の奥へと進みます。奥の間には女王が夷子を待っています。ついに決戦の時が巡ってきます。夷子は叫びます。
 「夜乙女を返して!」
 女王も叫んで応じます。 
 「愚かな土民の子!鼠めついにここまで来たるか!」 
 狂ったようにチェロが鳴り、激怒した女王が夷子に襲い掛かります。
 
 二十九 逆鱗

古き昔の栄光は
今 この時に絶えんとす
騎士達は去り 城は荒れ
国は滅びの道を行く
今もしここで力をば
我らのこの手に得ざるなば
ひっきょう世界は霧散する

古き昔の栄光を
わらわはこの手に取り戻す
破滅の縁の人と国
すべてはわらわの肩の上
今 もしここで退いて
手を拱いて見ておれば
ひっきょう世界は破滅する

汝 鬼の子 愚かな子
貴様は知るや王の責!
多くを生かすそのために
血涙隠して断下す
あの子を返せ?笑わせる!
あの子は汝のものならず
世界を救う鍵と知れ!

汝 愚かな土民の子
滅びの縁にある人を
汝の如きが救えるか?
愚かで無力な鬼の子に
作品名:ICO 鬼の子の詩 作家名:黄支亮