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「たとえその名は呼べずとも」

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 無謀ではないか、と言いかけたのを、秀吉は直前で飲み込んだ。半兵衛はいつもそうだ。一見すると無謀に思えるほどの奇策を唱えるが、それが何度となく秀吉に勝利をもたらして来たのである。そんな半兵衛に、秀吉は全幅の信頼を寄せていた。
 ならば今回も、我はお前を信じるまでよ。
「……我には時々、お前の考えが読めなくなるわ」
 そうは言い返したものの、秀吉の口元が笑みを浮かべているのを見て、半兵衛もまた笑った。
「僕は至って単純なことしか考えていないよ。服と一緒に意地も脱げるかもしれない、って考えているだけさ」
 四人が湯治へと旅立ったのは、その翌週のことであった。