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existar

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言えば「だから計画性がない」とまた叱責されそうだけれど(あるいは叱責してくれるほどの元気がないから閉じこもっているのか)、まさか門前払いを食らうとは思っていなかったから、生憎宿は取っていなかった。さらに言うなら、そのくせ帰るのは二、三日後と予定を立ててしまって、段取りもすっかりその通りになってしまっている。
仕方なく、街灯の灯り始めた街まで歩き、適当な喫茶店に入った。いやがらせのようにメニューには紅茶の茶葉の長ったらしい名前ばかり書かれている。分かろうとしなかったせいでどれがどういう味か分からず、とりあえず一番上に書かれているのが最も一般的なものだろうと、それを注文した。
西日がやけに暖かくて、ついでに言うなら旅の疲れと途方もない脱力感とで、座っただけなのに、なんだか眠たくなってきた。
遠くで小さな女の子のものだろう、舌足らずで高い、涙まじりの声が聞こえた。
「お兄ちゃんなんか大嫌い!」と、たどたどしい物言いがそれだけははっきりに、喚いた。
そんなこと、言うもんじゃないのに。思ったけれど、女の子の姿を探すでもなく、当然口にするでもなく、重たくなる瞼に任せて目を閉じかけ、けれどそれもほんの一瞬、結局女の子のことが気になってすぐ眼を開いた。


それなのに。

気付けばあたりは暗くなっていて、それでどういうわけか、おれは部屋の中にいた。
どういうことだろうとあたりを見れば、すぐ前に他でもない、さっき会わせてさえもらえなかった彼の姿があった。
朝、なのだろうか。彼の開いたカーテンの僅かな隙間から、窓にきれいな光が射していた。紛れもない、それは星や夕焼けの成せるようなグラデーションではなく、たとえば始まりの時に相応しいような、すこし靄のかかった白い朝。ぼやけた景色と、それに溶けそうな彼の後ろ姿を見ながら、だんだんといろんな事を思い出す。
門前払いは、危惧のうちのひとつでしかなかったんだっけ。実際は寝ているとずいぶん拍子抜けなことを言われて、呆れながら「中で待たせてくれるかい。」と言って、部屋に入って。ベッドには無害そうな寝顔の彼がいて、起こしてしまうとおれが悪者みたいになりそうで、椅子に座って待とうとしたけど、どうにも寒くて、あと眠たくって。毛布を借りて寒いのはどうにかなったけど、眠いのには拍車がかかってしまって。ああ、それで寝てしまった。

―――それで。
作品名:existar 作家名:さこそうこ