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ありえねぇ !! 3話目 後編

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【妖刀罪歌】の目的はね、人間を愛する事。で、自分の愛を表現する為に、人間を切り、体内に子供の種を巻き、【子供】を作る為に、寄生した人間を操って【切り裂き魔】行為を行っていたんだ。

今回の事件は、五年前に【妖刀罪歌】に切られ、【罪歌の子供】の種を体内に宿してしまった少女……【贄川春奈】って子が、長じて引き起こした事件なんだ。

彼女が何故、今頃になって、妖刀の子供に支配されてしまったのかは、私には判らない。
けれど、静雄に【愛】を語り、切りつけてきたあの人間全てが、【贄川春奈】に寄生していた【罪歌の子供】を母と呼び、彼女に【支配】されていた。
恐ろしいとは思わないかい?
【平和島静雄を切れ】と命じられたら、自分の意志と無関係に、実際君に刃物を持って襲い掛かっていったろ。それに【仲間を増やせ】と命じられたら、あの夜だけで池袋は、50人以上も切り裂き魔にやられた被害者がでた」


「だから杏里ちゃんが、暴走した【罪歌の子供】を切って、親が子を支配するって形で治めたんだ。
【園原杏里ちゃんは、静雄の恩人】、どうかそういう前提で、彼女の事を怒らずに、私の話を最後まで聞いて欲しい」


新羅の前置きは、長いが旨い。
これで、イラッとさせられても、多少我慢し抑えられる。


「セルティも、私が今から告げる仮説と研究で、酷く君を傷ける事があると思う。でも私は自分自身を人間で無い別の物に変えてしまうとしても、君を永遠に愛し、生涯寄り添いたいと望んでいる。この気持ちは絶対に捨てられない。だから、この研究を今後も続ける事を許して欲しい」


『判った』


「帝人君は申し訳ないけど、現状を分析した結果、私が君に協力し、【君を体に戻す】その手段方法全てが、私自身の夢を叶える延長線上にある。
でも、君を助けたい気持ちは本当なんだ。
君はセルティの大切な弟分で、私は彼女を愛している。彼女の願いは何だって叶えてやりたい。
だから今後、実験サンプル扱いになってると感じる事があっても、どうか気を悪くしないで欲しい」

《はい》

三人三様に釘を刺し終えた後、新羅はこつんとノートパソコンの画面を指で弾いた。



「さて、この妖刀【罪歌】には、今までの説明のように、切った人間を【子供】にし、【支配】する能力があるのは理解して貰えていると思う。
でももう一つ、私達が気づいていなかっただけで、明らかに不思議で、とんでもない力があったんだ。
それはね、【魂】を切り、従来のものと別な存在に【変化】または【変質】させてしまう能力だよ。……セルティ、ちょっとごめん、いいかい?」


新羅は恋人の手を取り、静雄と膝の上にいる帝人の前に立たせた。


「静雄には前に話した事があったよね。彼女はアイルランドの妖精【デュラハン】だ。
でも普通、妖精は本来【精霊】または【スピリチュアル】いわゆる【魂】に分類される存在。

そんな目に見えない筈の【魂】が、現実に今、人間である僕らの目の前で、当たり前のように見えたり触れられる。
静雄、これは明らかに【異様】だよね?」

「ああ」
こくりと頷く。


「どうして彼女がこの世に具現化してしまったのか? 詳細は割愛するけど原因ははっきり言う。【罪歌】の仕業だ。
【罪歌】がセルティの首を切り離した瞬間から、彼女を従来の妖精と別の種族に変えてしまったのだと思う。
また、彼女は首を切り離されて失い、目覚めた時から、過去の記憶が一切無い。
名前と、使い魔であるコシュダ・パワーの扱い方とか、いつもの生活習慣は覚えていたが、首を何故失ったのか、どういう状況で盗られたのか、その全てが思い出せなくなっている。

では、今度はミカド君だ。 

先程の実験の通り、彼も明らかに普通の幽霊や生霊と違い変質した。
実際、昨日静雄も病院で試したでしょ。ミカド君は自分の体なのに、もう入る事ができなかったのだから。

彼は今、首だけになり、記憶を失い、誰からも見えない存在で、何故こんな状況にさせられたのかも一切覚えていない。だけど、精神も安定し生活習慣もはっきり覚えている。


若干のズレがあるけど、セルティと似てる。そう思わないかい?
だから、私は今回の事件を、【妖刀罪歌】の仕業ではないかと断定した」


「なら新羅、何で俺には竜ヶ峰が見えてんだ? それにセルティやトムさんだって、こいつが判ったし」

「セルティは、同じ妖刀で切られ、変質したもの同士だからじゃないかな。で、静雄の場合は【罪歌に熱烈に欲しがられ愛されていた】から。君の上司は今の所、ほぼ毎日行動を共にしている。縁が深いから影響があったんじゃないか? 切られた者繋がりのセルティと一番親しい私は、実際ミカド君が見えていないでしょ。まぁ推測だけど」


「あー、何か判ったようなわからねぇような……」

がりがりと髪を掻き毟る。
こういう理屈っぽい話は、本当に苦手だ。


「じゃ、つまり竜ヶ峰が元に戻るには?」
「【罪歌】を捕まえる、これしかないよ。何故なら変質してしまったミカド君の魂を、元の状態に戻さないと、彼は何時までたっても自分の体に戻れないでしょ? 方法と手段を知っているのは、切った当人だけだろうし、私達が方法を研究し実験と失敗を繰り返すより、よっぽど早い」

「んじゃ簡単じゃねーか。【罪歌】は園原杏里なんだろ? 大体そいつ、竜ヶ峰といつもつるんでいるんだし。連絡先は、……あー、お前だってしらねぇよな。んじゃ紀田に聞いて……。だああああ、紀田の携帯番号、聞いときゃ良かった!! ちっ、しゃーねー。今からちょっくら病院に行って、紀田の奴も捕まえてここに引っ張って……」

新羅はゆうるりと首を横に振った。

「静雄、これ以上余計な人間は、話がややこしくなるから要らないよ。それに杏里ちゃんはセルティにとって、妹同然の娘だった。彼女の携帯番号は判っている」
「じゃ、直ぐに連絡をとれよ」
「無理だよ。彼女は現在失踪中だ。正直に言うと、切り裂き魔事件が終わった直後、学校を辞めて、姿をくらましている」

イラッときた。
正直舐めてんのかと思った。


「おい新羅、いくら馬鹿な俺でも判るぞ。辻褄あわねぇじゃねーか。竜ヶ峰が首だけになったのは昨日だ。お前の推測通りなら、こいつは昨日【罪歌】に切られて、人外だか何かに変質させられちまったんだろ?」
「うん」
「切り裂き魔事件があったのは、十日前じゃねーかよ」
「そうだよ」
「じゃあ、園原杏里が、池袋に戻ってきてるっていうのか?」
「そうあって欲しいと切実に思うよ。君の為に」


新羅はセルティを悲しげに見ると、気遣うように、きゅっと彼女の手を強く握る。


「今からの話は、私の父の日記を読んで調べた事だよ。

【妖刀罪歌】は最初、私の父が研究し、所有していたものなんだ。そして父がアイルランドでセルティを切って、こうして【首無しライダー】に変えた。その後【罪歌】は古美術商を営んでいた【園原堂】へ売却されて、妖刀はその一家を狂わせた。

数年前に起こった【切り裂き魔】の犯人は、妖刀が寄生した【園原杏里の母親】だった。
彼女は杏里ちゃんの目の前で、旦那の首を刎ね、直後に自害したという」

咥えていたタバコが、落ちそうになった。