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並盛亭の主人2

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「自炊できないみたいだから、当然コンビニ弁当や総菜の類は想定の範囲内だった。カップ麺も栄養的には問題だけど、偶に食べるくらいは許してあげようか」
「…は、あ、どうも」
「野菜ジュースも、あれはあれで美味しいから、ギリギリで認めてあげないこともない。…けど、最後のは何?」
「……え?」
涙目になりながら、ずきずき痛む頭頂部と額、どちらを押さえるべきかと左手をさまよわせていた綱吉は、だんだん不穏になり温度の下がっていく空気にぞわりと身を震わせた。
「言うに事欠いて、料理人であるこの僕の前で、『栄養補助食品の世話になった』だって?」
綱吉に向かってにやり、と笑った雲雀は、間違いなく『並盛亭の店主』の顔をしていなかった。
犯罪者も裸足で逃げ出しそうな、いうなれば地獄の番人?みたいな感じで。
「よくもまあ、その台詞がひねり出せたもんだ」
「ひ……っ」
地を這うような雲雀の低い声に、綱吉は別の意味で涙目になりかけた。
「雲雀くんは大嫌いじゃからのぅ、補助食品系統」
ほっほっほ、と笑いながら出された老紳士の合いの手に、ふん、と鼻息荒く雲雀は返す。
「あんなもので食事を済ませた気になるなんて、人生の4割くらいを無駄に過ごしてるよ」
「ま、その意見にはワシも賛成じゃ。補助食品はあくまで『補助』でしかないからのぅ、せっかくの食事が事務的・機械的な内容になってしまっては、やはりつまらないよ」
てっきり怪我人である綱吉を擁護してくれるのかと思いきや、老紳士は完全に雲雀の味方だった。
「お、俺は右手が使えないから、一時的にそれに頼ってたっていうだけで、決してそれで満足していた訳じゃ…」
「じゃあ、なんで早くうちにこなかったの」
「は?」
それでも必死に言い繕おうとする綱吉に、雲雀から想像の斜め上を行く言葉が返ってきた。
「あの、え、雲雀さん…?」
言葉の意味が掴めず、一瞬きょとんとした綱吉を見下ろして、雲雀はやれやれと肩をすくめる。
「まったく…しばらく顔を出さなかったと思ったら、栄養の足りない顔に戻ってるし」
「!」
「せっかく君は、いつも良い顔をして食べてくれてたのに、残念だよ」
「ご、ごめんなさい…」
「まあ来なかった理由は分かったし、今回は許してあげる」
(ん?いま雲雀さん、『俺がこの店に来るのが当たり前』、みたいに言った?)
最初の邂逅から約一ヶ月半、『昼ごはんは並盛亭で食べる!ていうか食べたい!』と決めて以来、綱吉は二日と空けずに通い続けてきたから、雲雀の方も綱吉のことを『常連』とまでは行かないにしても、顔馴染みに近い目で見てくれるようになっていたのだろうか。
(…どうしよう、もしそうだったら俺、なんかすごく嬉しいな)
高校を卒業して実家を出て、独りご飯や外食には慣れてきても、これといった行きつけの店など持ったことがなかった綱吉にとって、それは右手の痺れや不便さをつかの間でも忘れさせるほどに喜ばしいことだった。
(あれ、でも…嬉しいのは『雲雀さんのご飯が食べられること』?それとも、『雲雀さんに俺を憶えてもらえたこと』?)
どっちだろう、と瞬間的によぎった考えは、思いがけず優しく伸ばされた雲雀の手に包まれ、見えなくなってしまった。
そのままぽんぽん、と自分の蜂蜜色の頭を撫でられた綱吉は、知らず頬を上気させる。





作品名:並盛亭の主人2 作家名:新澤やひろ