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並盛亭の主人2

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「利き手じゃない方しか使えないなら、いっそ直接手でつまめる物の方がいいか。米とパン、どっちが食べたい?」
「お、お米が食べたいです!ごはん!」
雲雀に選択肢を提示され、綱吉は琥珀色の瞳を輝かせてとっさに叫んだ。
思い返してみれば、右手が使えないからと面倒をとことん省いた結果、先にたどり着いたのが栄養補助食品のブロックだったので、先々週の土曜日にこの店でオムライスを食べた後、白飯どころかコンビニおにぎりすらも口にしていなかった。
「だったらおにぎりと味噌汁にしよう。おにぎりにはたたき梅と鮭を詰めてあげる」
「ありがとうございます!…って、おにぎり?」
諸手を挙げて喜んだ綱吉だったが、両手を下ろしかけてはたと気づく。
「なに、昆布と明太子の方が良かった?」
「いえ、そっちじゃなくて。……おにぎりなんて、並盛亭のメニューには載ってなかったはず…」
こてん、と首を傾げて問うと、綱吉に背を向けて支度を始めた雲雀が、まかないだからね、と短く返す。
「賄い?」
「折良く客も引いたし、僕もこれから昼ご飯。サンドイッチとどっちにしようか迷ってたんだよ」
「あ、あの…え?」
「僕の分のついでだから、君は気にせずに食べな」
つまり、箸やフォークをうまく扱えない綱吉のために、雲雀が特別に手で食べられるメニューをこしらえてくれる、ということらしい。
「や、でも俺、そこまでしてもらうわけには…」
いかないです、と言いかけた綱吉だったが、ご飯の匂いをかぎつけて、ぐきゅるるる、と別の場所が盛大に声を上げる。
「腹の虫の方が、素直なようだねぇ」
「……っ!」
真っ赤になって左手で腹を押さえると、老紳士ののんびりした声が背後から聞こえてきて、綱吉の羞恥心を更に煽る。
「いいからちょっと待ってな、欠食児童」
「…はい…」
くつくつと小さく肩を震わせる広い背中を眺めながら、綱吉はおとなしく待つことにした。
(…ちぇ)
空腹で目を回していたときといい今回といい、雲雀にはみっともないところばかり見られている気がする。
しょぼんとうなだれていると、かたりと席を立つ音が聞こえてきた。
「さて雲雀くん、ワシはお暇するよ」
「もうそんな時間だっけ」
「そろそろ帰らんと、怒られるからのう」
ほっほっほ、とのんきな声で笑うと、老紳士はカウンターの上に伝票とお金を置いた。
「いつも通り、お代はここへ置いておくよ。ごちそうさま」
「うん、おそまつさま」
対する雲雀は会話はするけれど、背を向けたまま老紳士の方を見もしない。
お客さんなのに良いのかな、と不安を抱いた綱吉を知ってか知らずか、老紳士はにこやかに笑う。
「忙しい時間帯の雲雀くんの対応は、こんなもんじゃよ」
「え、そうなんですか?」
「調理から接客まで、ひとりでこなしておるからの。どこかで調整をせんと、店の回転が悪くなってしまうわい」
素っ気ない雲雀の様子にも慣れた風で、「また来るよ」と言って老紳士は店を出て行った。







作品名:並盛亭の主人2 作家名:新澤やひろ