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Eternal White

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 壁に立てかけられ眠る魔剣を手に取り語りかける。と、起きたらしいモルギフが突然なにやら訴えてくる。
「なに言ってんだ、お前?」
 いきなりの反応。首を傾げても、モルギフの訴えは続くし、しかも腕の中で暴れだすからたまったものじゃない。
「おい、モルギフ! 寝ぼけてんのかっ」
 剣を落とさないよう上半身を動かせば、足元がおぼつかない。何かの箱につまずいたのは仕方ないことだと思う。あっと思うのもつかの間。派手な音と盛大な埃を巻き上げ、ユーリは尻餅をつく。その足元に転がってきたのは……。
「あれ、魔鏡?」
 見覚えのあるラーメンどんぶり。それがきらりと光って、目の前の風景が一変した。



 どこからともなく泣き声が聞こえる。
 眩む視界に何度か目を擦ると、ようやく周りが見え始める。といっても、横殴りの雪のせいで、いまいちクリアではない。って雪!?
 慌てて周囲を見渡すと、明らかに野外の、しかも吹雪の中。
「……マジでモルギフが飛ばしてくれたのかよ」
 ついさっきまでの会話を思い出し、しかしさすがに冗談キツイと青くなる。いくらなんでも、何の準備も無しに雪の中に放り出されたら、魔王だって遭難する。
 幸い、後方は森っぽい。とりあえずそっちに避難するべきだと足を踏み出す。鏡がないので分からないが、どうも防寒着を身につけているらしい。足も、身体も、濡れる気配はしない。さっきまで着ていた学ランもどきが、こう何倍も膨れた感じだ。
 どうにかこうにか木々の隙間にもぐりこむと、吹雪は少し遠くなる。代わりに、さっき聞こえた泣き声が近くなる。
「誰か、いるんですかー?」
 幹に反射し、凍てつく外気に声は飲み込まれる。反応は返ってこない。ただ、泣き声は聞こえ続けるから、迷うことなくそちらへ足を向けた。ここで立ち止まっていてもしょうがない。
 どさりと、木の枝に積もった雪が落ちてくる音がする。それに怯えたように一瞬、泣き声が止む。
 木陰から見えるのは、ほんの小さな子供の姿。足元の小枝を踏んだ音が、高く響く。はっと向けられる、こぼれそうに大きな碧の瞳。
「……えーと、大丈夫?」
 見覚えのある面影に声をかけると、子供は真っ赤な顔を拭ってこちらを睨みつけてきた。
「なんだ、お前は!」
 子供特有の高い声。その震える語尾が、彼の精一杯さを伝えてきて、どこか微笑ましい。
「おれは…ユーリ。君は?」
作品名:Eternal White 作家名:架白ぐら