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Eternal White

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 驚かせたと鼻面を撫でてやりながら、狭い雪洞の中を見渡す。だが、ここに居るのは、自分と馬一頭だけ。
 ユーリがいたと思ったのは、さすがに都合のよい夢だったらしい。
 大事な大事な、誰よりも愛しい人。最後に甘い夢を見せてもらったのかと自嘲すれば、またレーヴェが啼いた。
「さっきからどうしたんだ、お前……」
 そんな主人の声を無視して、起き上がった白馬は勝手に外へ出て行く。引き戻そうと慌てて外に出ると、空は久しぶりの青が広がっていた。
「驚いた……お前、気づいていたのか?」
 隣の愛馬に語りかけると、もちろんといわんばかりに彼は鼻面を振る。
 迷っている暇はない。急いで雪洞に戻ると、まとめてある荷物を手に外へ出る。目印に刺していた剣は、残念ながら雪に埋もれて見つけるのには時間がかかりそうだ。
「春になったら、また来るからな」
 荷物を括りつけ、馬の背に跨る。剣は、ここにおいていくしかないが、きっと誰も責めないだろう。
 出城の方角は分かない。だが、なぜか迷わず帰れる自信があった。
「行くぞ、レーヴェ」
 腹を蹴ると、白馬は雪原を歩き出す。
 きらりと太陽を反射する雪が、ひどく眩しかった。


【終】






―The white world―



 どの季節が好きかと聞かれたら、当然夏と答える。
 それは周りの誰もの想像の範囲内で、ちょっと悔しい。だが、夏以外選びようがないから、仕方ない。
 だが、きっと同じと思っていた相棒は違った。
「ぼくは、冬が好きだ」
 普段よりも大人びた笑顔でそう言うと、何かを思い出したように吹き出す。
「なんで冬なんだよ?」
 おそらく、思い出し笑いが好きな理由。そう思って問いかければ、ちょっとだけ肩を竦められた。
「冬は潔いだろう?」
「寒いだけじゃん」
「……お前は風情というものがないのか?」
 ちょっとむっとして、いいから聞けと促される。
「凍てつく空気も特徴だが、中途半端じゃないのがいい。寒ければ寒いなりの防寒をすればよいだけだ」
「まあ、確かに……」
「それに、雪が……何もかも拒むような、あの何に対しても厳しいところが好きだ」
 そういって笑う、彼の考えのほうがよほど潔い気がしたが、ここは円滑な魔族関係のために黙っておく。
 人の好みは千差万別だから。
作品名:Eternal White 作家名:架白ぐら